3月26日の米国市場の開始まもなく、エヌビディア(NVDA)の株価は4.46%下落し、116.52ドルを記録しました。市場全体が軟調な中で、特に中国における規制強化への懸念が株価の下押し要因となっています。エヌビディアの株価は前日の25日にも0.6%下落しており、続落しています。
中国でのAIチップ販売をめぐる懸念が拡大
下落の背景には、中国市場におけるエヌビディアのチップの将来性に対する不透明感が存在します。アリババ(BABA)の会長である蔡崇信氏は、香港で開催されたHSBCグローバル投資サミットにおいて、アメリカのテクノロジー企業がAIインフラに対して巨額の投資を行っていることに「驚いている」と述べ、数千億ドルを費やすことの必要性に疑問を呈しました。
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さらに、アメリカ政府は3月25日に国家安全保障上の懸念から、数十社の中国企業をエンティティリスト(輸出制限リスト)に追加しました。この中には、中国最大のサーバーメーカーであり、エヌビディアやインテル(INTC)、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)などの重要顧客であるインスパー・グループの子会社も含まれています。
中国政府もエヌビディアのH20チップに圧力か
加えて、中国当局は国内の大手テクノロジー企業に対し、エヌビディアがアメリカの対中輸出制限に対応して設計したH20チップの購入を控えるよう非公式に求めている模様です。英フィナンシャル・タイムズの報道によると、同チップが中国のエネルギー効率基準に違反していることが理由とされています。
現時点では規制が厳格に執行されているわけではなく、H20の販売に直ちに影響が出ているわけではありませんが、エヌビディアは中国当局との会合を模索しており、チップ設計の調整も検討しているとのことです。こうした対応によって、同社の競争力が低下するリスクも浮上しています。
エヌビディアの広報担当者は「当社の製品は、提供するすべての市場において優れたエネルギー効率と価値を実現しています。技術の進化が速い中で、輸出規制政策も柔軟に見直され、米国企業が最も効率的な製品を提供できるようにすべきです」とコメントしています。
半導体セクター全体にも波及
この日の下落は、エヌビディアだけでなく半導体セクター全体に影響を及ぼしました。アドバンスト・マイクロ・デバイセズは2.4%安、ブロードコム(AVGO)は1.7%安、インテルも1.7%安となっています。
今後、中国とアメリカのテクノロジー政策の対立がさらに激化すれば、エヌビディアをはじめとした半導体各社の売上や市場評価に大きな影響を与える可能性があります。特に中国市場は依然として重要な成長ドライバーであるため、動向には注視が必要です。
*過去記事はこちら エヌビディアNVDA