AIバブル懸念が再燃?アリババ会長の発言が市場に波紋

3月25日、香港で開催された投資家向けテクノロジー会議において、中国の大手テクノロジー企業アリババ(BABA)の蔡崇信会長が、人工知能(AI)関連の過剰投資に対して警鐘を鳴らしました。同氏は、アメリカのテクノロジー大手によるデータセンター建設やAIインフラへの巨額投資について「驚くほどだ」と述べ、AI分野の資本投下がバブル的様相を呈していると懸念を示しました。

この発言は、AI需要の持続性をめぐる市場の不安をさらに強めるものであり、AI半導体関連株に影響を及ぼしました。

中国と米国のAI競争が地政学的な様相に

蔡氏の発言は、AI分野が単なる産業競争を超えて、米中間の地政学的な戦略競争へと発展していることを示唆しています。

今週初めには、アリババが出資するアント・グループが、中国製の半導体を用いたAIモデルのトレーニングで、米エヌビディア(NVDA)製チップと同等の性能を20%低コストで達成したと発表しました。この報道は、米国製AI半導体への依存を減らすという中国側の技術的自立の一環と受け取られています。

昨年には、中国のバイドゥ(BIDU)のCEOであるロビン・リー氏も、AIバブルのリスクについて指摘し、「AIブームに参加している企業のうち、真に価値を生み出せるのは1%程度」と語っていました。

エヌビディアやブロードコム、マイクロンなどに下押し圧力

ツァイ氏の発言後、エヌビディア、ブロードコム(AVGO)、マイクロン・テクノロジー(MU)などの株価がいずれも小幅に下落しました。アリババの株価も若干の下げを記録しました。ただし、週明けにはアント・グループのコメントが出た後にも関わらず、エヌビディアなどの株価は上昇しており、市場の反応は一様ではありません。

中国から相次ぐ「慎重論」とAIへの投資競争

米国みずほ証券のアナリストであるジョーダン・クライン氏は、今後も中国側からAI投資に対する慎重な発言が増えていく可能性があると指摘しました。AIが「世界的な戦略的軍拡競争」のような性格を帯びつつあるためです。

クライン氏は、蔡氏の発言はアリババ自身の過剰投資を懸念しているというより、競合他社による過剰投資に警戒している可能性があると述べました。ただし、アリババは先月の決算説明会において、今後3年間でクラウドとAI分野に対して「過去10年の合計を上回る投資を行う」と発表しており、その発言と整合性を欠いているとの指摘もあります。

エヌビディアの快進撃と中国の対抗姿勢

クライン氏はまた、蔡氏らの発言がエヌビディアの年次開発者会議「GTC 2025」の直後に出た点に注目しました。GTCでは、エヌビディアが今後毎年新しいAIチップを投入していくという攻めのロードマップを発表しており、中国企業の発言はそれに対する「牽制」の意味合いがあると見られています。

事実、1月6日の高値から約19%下落しているエヌビディア株は、中国のディープシークによって、より低コストでAIモデルを構築できる可能性が指摘された直後から軟調に推移しています。

米中関係と半導体輸出規制の影響も無視できない

半導体関連株はここ数カ月、米中間の貿易摩擦や規制リスクによって大きく振れています。バイデン前大統領が5月13日に導入を決めていたAIチップの輸出規制強化は、中国本土以外の地域にも影響を及ぼす可能性があり、投資家の間で懸念が高まっています。

トランプ大統領が前政権が定めた輸出規制にどのようなスタンスを取るかが注目されており、テック業界にとっては不確実性が増しています。

まとめ

AIブームは引き続き投資家の注目を集めていますが、アリババの蔡崇信氏や中国企業からの慎重な声は、過熱気味の市場に一石を投じています。特に米中間の地政学的リスクや技術覇権争いの構図は、今後のAI関連銘柄の値動きに影響を与え続けると見られます。

投資家としては、AI関連の成長性を期待する一方で、バリュエーションの妥当性や規制リスクを見極める冷静な視点が求められる局面に入っていると言えます。

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