米国の電力会社タレン・エナジー(TLN)は、アマゾン・ドット・コム(AMZN)との既存のデータセンター契約を活用し、今後さらに株価の成長余地を広げていく可能性が高まっています。ジェフリーズのアナリスト、ポール・ジンバルド氏をはじめとするチームは、タレンの投資評価を「買い」で据え置きながらも、目標株価を269ドルから260ドルに引き下げました。
3月21日時点でのタレンの株価は214.81ドルで、これは新しい目標株価に対して21%の上昇余地があることを意味しています。
データセンターの価値がまだ株価に織り込まれていない
アナリストたちは、タレンの株価が2月中旬に記録した史上最高値250.37ドルからは下落しているものの、2025年年初から6.6%上昇し、過去1年で146%近く上昇していると指摘しています。それにもかかわらず、データセンターに関する価値はまだ株価に十分反映されていないと分析されています。
アマゾンとの関係がタレンを差別化
2024年3月、タレンはペンシルベニア州にあるハイパースケールのデータセンター・キャンパスをアマゾン・ウェブ・サービスに6億5000万ドルで売却しました。このデータセンターは最大960メガワットの容量を持ち、タレンの原子力発電所「サスケハナ工場」に隣接しています。この取引は、2023年5月に連邦破産法第11章の適用を回避した後の再建戦略の一環と位置付けられています。
タレンのCEOであるマック・マクファーランド氏は、「私たちはデータセンター・キャンパスを建設する計画ではなかったが、当時の状況下では、保有する資産から可能な限り最大の価値を引き出す必要があった」と述べています。
FERCの判断と今後の課題
しかし、2024年11月には、連邦エネルギー規制委員会(FERC)が、タレンが申請していた電力購入契約の300メガワット超への拡大案を却下しました。これに対してタレンは2025年1月末にFERCを提訴しています。マクファーランドCEOは第4四半期の決算説明会で、「規制上の課題はあるものの、アマゾンとの関係は強固であり、成長の停滞は見られない」と述べています。
市場価格に依存しない強み
ジェフリーズは、タレンが既存の契約により、電力を市場価格に左右されずに長期供給できるという点で他社と一線を画していると分析しています。特に、現在の電力業界では、マーチャント型(市場価格で電力を販売する)原子力会社が契約獲得の不確実性に苦しんでいる中、タレンは競争上の優位性を確保しています。
また、アナリストたちは、タレンとアマゾンの契約が「メーター前契約」に変更される可能性も示唆しており、これによりアマゾンは送電料金を支払うことになります。現在の「ビハインド・ザ・メーター」方式とは異なり、送電網を通じた契約形態に移行する可能性があるということです。
成長を支える業界トレンド
データセンターからの電力需要の増加と、固定容量の価値向上という業界全体のトレンドも、タレンにとって追い風となっています。ジェフリーズのアナリストは、これらのトレンドがタレンの売上拡大と事業規模の成長を促進する可能性があると述べています。
また、容量価格が今後大幅に上昇する見通しにより、同社の利益成長にも大きな期待が寄せられています。
ウォール街でも強気姿勢が広がる
タレンに対しては、ジェフリーズだけでなく他のアナリストからも好意的な見方が示されています。ファクトセットの調査によると、カバーしている13人のアナリスト全員が「買い」またはそれに準ずる評価をタレン株に対して与えています。
エネルギー需要の増加、原子力の安定供給力、そしてアマゾンとの戦略的な提携により、タレンは今後も電力市場での存在感を強めることが期待されています。