エヌビディアが目指す1兆ドル市場とは?GTC発表から読み解くAIインフラの未来

3月18日から開催された米半導体大手エヌビディア(NVDA)のGTCカンファレンスは、AI業界の将来像を描くうえで極めて示唆に富む内容となりました。特にCEOのジェンスン・フアン氏が語った「2028年までにデータセンターインフラへの年間投資が1兆ドル規模に到達する」という見通しは、多くの市場関係者の注目を集めました。

本記事では、モトリーフールが報じた内容を踏まえつつ、エヌビディアの今後の成長可能性について独自の視点から分析します。

データセンター市場の拡大は「追い風」ではなく「地盤」

エヌビディアの成長の核となっているのがデータセンター分野です。同社は2025年1月期において、売上の約88%をこの部門で稼ぎ出しており、データセンター市場が同社の事業全体を牽引していることは明らかです。

市場調査会社デルオロ・グループによれば、2024年のデータセンターインフラ支出は4,550億ドルに達したとされており、エヌビディアはその25〜30%を取り込んでいると見られます。この数値が妥当であるとすれば、仮に2028年に市場規模が1兆ドルへと拡大した場合、エヌビディアの売上は2,500億〜3,000億ドルに達する可能性が出てきます。

重要なのは、この「拡大する市場」に依存するだけでなく、同社が技術革新と顧客ニーズへの対応を通じて、その地位を強化している点です。データセンター市場は単なる追い風ではなく、同社の事業基盤そのものであり、その土台の上に成長を積み上げている構図といえます。

新アーキテクチャとソフトウェア革新が差別化要因に

GTCで発表された「ブラックウェル・ウルトラ」や「ヴェラ・ルービン」などの新型GPU・CPU統合チップは、エヌビディアが依然として業界の先頭を走っている証左といえます。特に「ルービン・ネクスト」ではGPUのダイ数を従来の2倍にすることで、演算能力を飛躍的に向上させる計画が発表されており、高速化と効率性の両立を図っている点が注目されます。

また、ソフトウェア面でも「NVIDIA Dynamo」という新しいオープンソースシステムを打ち出しました。このDynamoは数千のGPU間での通信を効率化し、推論処理のコスト削減とスループット向上に貢献するとされます。エヌビディアが「AIファクトリーのOS」とまで言及したこの取り組みは、単なるハードウェア企業から「AIプラットフォーマー」へと変貌を遂げつつあることを示唆しています。

このようなソフトウェアとハードウェアの垂直統合こそが、今後のAIインフラ市場におけるエヌビディアの競争優位を決定づける鍵になると考えられます。

ロボティクスと自動運転への布石

エヌビディアは、AIインフラだけにとどまらず、ロボティクスや自動運転という成長市場にも進出しています。特にヒューマノイドロボット向けの基盤モデル「Isaac GROOT N1」の発表は、労働力不足という社会課題へのテクノロジーによるアプローチと捉えることができます。

また、ゼネラルモーターズとの提携では、自動運転システムの開発だけでなく、AIによる次世代工場の自動化支援にも踏み込んでいます。これは、先月のトヨタとの提携と同様、自動車業界との連携強化を示す動きであり、エヌビディアが今後「モビリティ×AI」分野で大きなプレゼンスを築いていく可能性を示しています。

バリュエーションと投資妙味

最後に、株式としての投資魅力についても触れておきたいと思います。エヌビディアの株価は、2025年の予想ベースで株価収益率(PER)が26倍未満、PEGレシオが0.5を下回っており、市場の成長期待を踏まえると割安感がある水準といえます。

一般にPEGが1を下回る場合、成長を考慮した評価として割安とされますが、エヌビディアのように急成長を維持しつつ、高い収益性を誇る企業がこの水準にあるのは、投資家にとってチャンスと捉えることができます。

まとめ:1兆ドルの未来は幻想ではない

モトリーフールが指摘するように、エヌビディアにはまだ大きな成長余地が残されています。しかし、それは単なる楽観的な予測ではなく、市場動向、技術革新、そして戦略的提携の積み重ねによって現実味を帯びつつあります。

データセンター市場の拡大、ソフトウェアとハードウェアの融合、そして新領域への進出。これらを総合的に捉えると、エヌビディアは「AI時代の中核銘柄」としてのポジションを確実に固めているといえるのではないでしょうか。

*過去記事はこちら  エヌビディアNVDA

最新情報をチェックしよう!
>

幸せな生活作りのための米国株投資。
老後資産形成のための試行錯誤の日々を報告していきます。
皆様の参考になれば幸いです。

CTR IMG