2025年に入り、S&P500指数(SPX)は2月の最高値から約8%下落しました。この市場の動きについて、米国の投資専門誌バロンズ(Barron’s)は、大型株の調整が進む中で、今が買い場になり得る銘柄を紹介しています。
バロンズの分析では、特に成長力が高く、長期的に安定した業績を見込める企業に注目すべきとされています。本記事では、バロンズの報道をもとに、市場データや専門家の見解を交えながら、独自の視点でこれらの銘柄の投資妙味を考察します。
大型株の調整は買い場となるのか?
バロンズの記事では、最近の市場調整の要因として、トランプ大統領の関税政策による経済への影響が指摘されています。輸入コストが上昇することで、企業が価格を引き上げざるを得ず、消費需要が減少し、利益が圧迫される懸念が広がっています。
しかし、すべての企業がこの影響を受けるわけではありません。特に、売上成長率が高く、空売り比率が低い企業は、市場が下落しても相対的に安定したパフォーマンスを発揮する傾向があります。これは、トリバリエイト・リサーチ(Trivariate Research)のアダム・パーカー氏の分析によるものです。
パーカー氏のデータによると、S&P500指数の均等加重版(Equal-weighted S&P 500)が月間で2%以上下落した場合でも、成長力のある大型株の下落幅は市場全体よりも小さいことが確認されています。現在の市場環境は、長期投資家にとって魅力的な買い場となる可能性があります。
バロンズが注目する「1000億ドル企業」
バロンズの記事では、時価総額1,000億ドル以上の企業のうち、特に成長が期待できる銘柄がリストアップされています。これらの企業は、市場の下落が続いた場合でも、比較的下値が堅いと考えられています。
企業名 / ティッカー | 時価総額(10億ドル) | セクター | 年初来株価変動率(YTD) | 予想PER |
---|---|---|---|---|
イーライ・リリー(LLY) | 804 | ヘルスケア | 7.6% | 34.1 |
ビザ(V) | 665 | 金融 | 8.1% | 28.4 |
マスターカード(M) | 492 | 金融 | 2.6% | 32.5 |
オラクル(ORCL) | 422 | テクノロジー | -8.2% | 23.3 |
セールスフォース(CRM) | 268 | テクノロジー | -15.6% | 24.6 |
ネットフリックス(NFLX) | 409 | 通信サービス | -8.2% | 35.9 |
これらの企業は、それぞれ異なる業界に属していますが、共通して長期的な成長ポテンシャルを持つ点が特徴です。
イーライ・リリー(LLY):ヘルスケアの成長株
バロンズの記事では、イーライ・リリーの成長ポテンシャルが強調されています。同社はGLP-1関連医薬品を武器に、肥満治療市場でのシェア拡大を進めています。
市場調査によると、肥満治療分野の市場規模は年間1,000億ドルを超える見込みであり、同社のゼップバウンドやマウンジャロは、この成長をけん引すると期待されています。アナリストの予測では、2028年までに600億ドルの売上を達成する可能性があります。
さらに、同社は研究開発や生産設備の投資フェーズをほぼ終了しており、これにより利益率の拡大が見込まれています。アナリストによると、今後3年間で年間平均23%以上の利益成長が期待されています。
ビザ(V)&マスターカード(M):安定した成長を続ける金融銘柄
キャッシュレス決済の普及が進む中、ビザとマスターカードは安定した成長を続ける銘柄として注目されています。市場全体の下落が続く中でも、ビザは年初来で8.1%の上昇、マスターカードは2.6%の上昇を記録しています。
両社は国際的な決済ネットワークを持つため、景気変動の影響を受けにくい点が強みです。アナリストは、今後もキャッシュレス化の流れが続く限り、安定的な成長が見込まれると指摘しています。
オラクル(ORCL)&セールスフォース(CRM):AI活用で成長を目指す
オラクルは、企業向けクラウド事業の拡大を進めています。最近の株価下落(年初来-8.2%)は、市場全体の影響が大きいと考えられますが、クラウドサービスの需要拡大により、今後の成長が期待されています。
一方、セールスフォースは、クラウドサービスにAI技術を組み込み、業務効率を向上させる新サービスを展開しています。現在、年初来で-15.6%の下落を記録していますが、アナリストは長期的な成長ポテンシャルがあると見ています。
まとめ:長期投資の視点で注目すべき銘柄
バロンズの記事では、現在の市場調整を「長期的な成長を見込める企業を割安で買うチャンス」と捉えるべきとの見方が示されていました。
イーライ・リリー、ビザ、マスターカード、オラクル、セールスフォース、ネットフリックスといった銘柄は、景気の影響を受けにくい事業モデルや、将来的な成長性を持つ企業として評価されています。
市場の短期的な変動に左右されることなく、長期視点での投資判断が求められます。