3月13日の米国市場で、S&P500種株価指数(SPX)が調整局面に入り、直近の高値から10%以上下落しました。ナスダック総合指数(COMP)はすでに調整局面にあり、ダウ平均株価(DJIA)もそれに近づいています。今回の急落を受けて、多くの投資家が「これは買い場なのか、それともさらなる下落の前兆なのか?」と悩んでいると思われます。
米国の著名な投資情報メディア バロンズ(Barron’s) は、この市場の動きについて専門家の意見を交えた分析記事を公開しました。本記事では、その内容を参考にしながら、独自の視点を交えて市場動向を考察していきます。
現在の市場調整は買い場となるのか?
バロンズの記事では、一部の市場専門家が現在の下落を買い場と見なしていることが紹介されています。例えば、投資運用会社 Research Affiliates の創設者であるロブ・アーノット氏は、小型株やバリュー株が過度に売られており、今は魅力的な投資機会と指摘しているようです。
この考え方には一定の合理性があります。実際、歴史的に見ても市場が急落した後、長期的には上昇する傾向が強いことがデータから確認できます。例えば、ダウ・ジョーンズ・マーケット・データによると、2008年以降の過去15回の市場調整局面の後、S&P500はその後12ヶ月で平均15%以上上昇しているのです。
もちろん、これは過去のデータであり、今後も同様のパターンが続くとは限りません。しかし、長期投資家にとって「安くなったときに買う」という戦略が有効である可能性は高いと考えられます。
下落の要因は何か?トランプ大統領の関税政策が影響
市場の下落要因として、バロンズの記事ではドナルド・トランプ大統領の関税政策が市場に不透明感をもたらしていることを指摘しています。特に、関税政策が世界的な貿易戦争につながる可能性があり、それが投資家心理を冷やしているとのことです。
ラウンドヒル・インベストメンツの投資ストラテジストたちも、最近のブログ記事で「関税の範囲や経済成長への影響が不透明であるため、投資家は慎重な姿勢を取らざるを得ない」と述べています。
過去の経験からもわかるように、関税政策が市場に与える影響は計り知れません。2018年の米中貿易戦争の際には、S&P500が大きく変動しましたが、その後は企業の適応力により回復しました。今回も、短期的にはボラティリティが高まる可能性がありますが、長期的な視点で見ることが重要です。
S&P500はさらに下落するのか?
現在の調整が続くと、S&P500が弱気相場入りする可能性もあります。バロンズの記事では、ダウ・ジョーンズ・マーケット・データを引用し、S&P500が4,915.32を下回ると弱気相場と見なされることを紹介しています。
しかし、一部の専門家は「現在の急落は弱気相場の特徴ではなく、典型的な調整局面の動きに近い」と指摘しているようです。例えば、クリーマー・ウェルス・アドバイザーズのCIOであるジョン・クリークマー氏は、「調整局面では短期間で大きく下落するが、弱気相場はよりゆっくりと進行する傾向がある」と述べています。
この見解を支持するデータとして、過去の市場調整のパターンを見ると、多くの場合 市場は3~4ヶ月で回復することがわかります(ワイツ・インベストメント・マネジメントのレポートより)。これが事実であれば、投資家は焦って売るのではなく、冷静に市場の回復を待つ戦略が有効と考えられます。
市場のバリュエーションは適正水準に?
今回の調整によって、S&P500のバリュエーションも以前よりはるかに適正な水準になっています。バロンズの記事では、S&P500が現在2026年の業績予想の18倍で取引されており、5年平均の19倍をわずかに下回っていることが指摘されています。
わずか1ヶ月前には、2026年の業績予想の約23倍で取引されており、これは約5年ぶりの高水準でした。これに比べると、現在の水準はむしろ適正といえます。
また、投資の世界では「市場が極端に割高な時に買うより、割安になった時に買う方が有利」と考えられています。今回の調整局面が、慎重な投資家にとって「押し目買い」の好機である可能性は十分にありそうです。
まとめ:今は押し目買いのチャンスか?
バロンズの記事をもとに考察すると、現在の市場調整は一時的なものである可能性が高く、長期的に見れば「押し目買い」の好機と考えられます。
市場データを振り返ると、過去の調整局面では平均して3~4ヶ月で回復し、その後の1年間で平均15%以上のリターンを記録していることがわかります。さらに、バリュエーションも適正な水準に戻りつつあることから、慎重に銘柄を選別しながら買い増すことは合理的な投資戦略といえます。
もちろん、関税問題や経済成長の不透明感など、短期的なリスク要因は存在します。しかし、それらを考慮した上でも、「長期的な視野を持ち、優良銘柄に分散投資する」ことが、安定した資産形成の鍵となります。
*過去記事「S&P500の調整は一時的?市場の変化と今後の投資戦略」