米国株市場では、ハイテク関連株が市場の変動に左右されやすい一方で、長期的な成長が期待される分野でもあります。特にソフトウェアセクターは、市場調整の影響を受け、投資妙味が増してきています。
米国の投資情報メディア「バロンズ」は、最近の市場動向を分析し、ソフトウェア株が魅力的な水準にあると指摘しました。今回は、その内容を参考にしながら、独自の視点を交えて解説します。
ソフトウェアETFは調整局面、今がエントリーのチャンスか
バロンズによると、ソフトウェアセクターの主要ETFであるiシェアーズ・エキスパンデッド・テック・ソフトウェア・セクターETF(IGV)は、2024年12月の高値110ドルから19%下落し、現在は88ドル付近で推移しています。この下落の背景には、ドナルド・トランプ大統領の関税政策による市場の不安感があるようです。
テクニカル分析の観点では、85〜90ドルの水準が下値支持線となる可能性があります。過去のトレンドを見ると、この価格帯は投資家が買い支えてきた水準であり、2023年10月からの上昇トレンドを維持するための重要なポイントになりそうです。
一方、バリュエーションの観点でも、今の水準は過去のピーク時と比べて割安といえます。ソフトウェアセクターの予想株価収益率(PER)は31.6倍まで低下し、12月の40倍から大幅に下がっています。さらに、S&P 500(SPX)との比較では、現在のプレミアムは過去5年平均の64%から55%へと縮小しており、相対的に魅力的な水準になっています。
市場環境を考えると、ソフトウェア株に再び資金が流れ込む可能性が高まりつつあるといえます。
ソフトウェア業界の売上成長は今後も続くのか
バロンズは、ソフトウェア企業の売上成長が今後も続く可能性についても言及しています。市場調査会社のファクトセットのデータによれば、ソフトウェアETFの対象企業の売上は今後3年間で毎年12%ずつ成長する見通しとのことです。
この成長を支えているのが、企業のクラウドシフトとAI技術の導入拡大です。特に、データ管理、セキュリティ、ビジネスプランニング向けのクラウドベースのソリューションに対する需要が急拡大しています。
例えば、マイクロソフト(MSFT)は、クラウドサービス「Azure」を通じて強固な売上成長を維持しています。また、セールスフォース(CRM)やパロアルトネットワークス(PANW)などの企業も、企業向けソリューションの拡大によって成長を続けています。
バロンズは、ソフトウェア業界全体の年間売上成長率が今後3年間で16%に達すると予測しており、S&P 500全体の平均成長率を大きく上回る水準になると見ています。
ソフトウェア株はディフェンシブな投資先となるか
一般的に、ソフトウェア企業は高成長株と見られがちですが、バロンズは「ディフェンシブな側面もある」と指摘しています。特に、企業のAI投資が加速していることから、景気後退局面でもソフトウェアへの支出は削減されにくいという点がポイントになります。
実際、多くの企業が業務効率化のためにAIを活用しており、AI技術を搭載したソフトウェアの需要は継続的に拡大しています。例えば、企業のカスタマーサポート、データ分析、自動化ツールなど、あらゆる分野でAIが活用されています。
また、22Vリサーチのデニス・デバスチャー氏は、ソフトウェア企業の中でも特に市場をアウトパフォームする銘柄が存在すると指摘しています。
注目のソフトウェア銘柄
バロンズの記事では、今後の成長が期待されるソフトウェア企業として以下の銘柄が挙げられています。
- マイクロソフト(MSFT)
- パロアルトネットワークス(PANW)
- パランティア・テクノロジーズ(PLTR)
- オラクル(ORCL)
特に、オラクルはAI市場での成長が期待される企業の一つです。同社は、クラウド・インフラストラクチャ部門の拡大に注力しており、2025年2月期の売上は前年同期比8%増の141億ドルに達しました。さらに、クラウド・インフラストラクチャの売上は51%増と、急速に成長しています。
米国みずほ証券のシティ・パニグラヒ氏は、「オラクルの売上成長は2026年以降も加速する可能性がある」と述べています。特に、同社は米国でAIインフラを構築する「スターゲート・プロジェクト」に関与しており、これによる追加の売上が今後期待できるとのことです。
オラクルの成長を支える要因として、以下のポイントが挙げられます。
- AI技術を活用したクラウドインフラの拡大
- ハイパースケーラーとの提携によるマルチクラウド戦略
- 企業向けAIソリューションの需要増
直近の四半期では、オラクルの利益は20%増加しており、同社の収益性が改善していることが示されています。
まとめ:ソフトウェア株は長期投資に適したタイミングか
バロンズの記事を踏まえると、現在のソフトウェア株は過去の高値から調整し、バリュエーション面でも魅力的な水準になっています。クラウドやAI市場の成長を背景に、今後数年間の売上成長率は2桁を維持する可能性が高いと考えられます。
特に、マイクロソフト、オラクル、パロアルトネットワークス、パランティア・テクノロジーズなどの企業は、AI市場の拡大とともに成長を続ける可能性があります。
市場環境を考慮しながら、ソフトウェアセクターへの投資を検討する価値は十分にあるといえます。