電気機器メーカーのイートン(ETN)の株価が3月12日の米国市場で上昇しました。ウォール街は同社の成長計画に注目しており、アナリストの評価も向上しています。
イートンはアナリストや投資家向けのイベントを開催し、2030年までに毎年6~9%の売上成長と利益率を約4ポイント向上させる計画を発表しました。2024年の営業利益率は約20%でしたが、今後の成長によりさらに拡大する見通しです。また、合併や買収による成長を加えることで、年間12%以上の売上成長を目指しています。
この発表を受け、キーバンクのアナリストであるジェフリー・ハモンド氏は、イートンの株式評価を「ホールド」から「買い」に引き上げ、目標株価を340ドルに設定しました。
イートン株価は年初来で約15%下落も、割安感が指摘される
12日の取引開始直後、イートンの株価は4.3%上昇し、294.51ドルを記録しました。一方、S&P500指数は1.2%上昇、ダウ平均は0.6%の上昇となりました。特に、12日の取引では予想よりも緩やかなインフレデータが発表されたことが、多くの銘柄を押し上げる要因となりました。
しかし、2025年初めに登場した中国の人工知能アプリ「ディープシーク」の影響で、イートン株は年初から約15%下落しています。このアプリはエヌビディア(NVDA)の高価なコンピューティングパワーを必要としない可能性が指摘され、データセンター向けの電力需要が減少するのではないかという懸念が広がったことが要因です。
この点について、ハモンド氏は「データセンターの設備投資に関する最近の懸念は認識しているが、最近の株価下落は最高品質の銘柄の一つへのユニークな参入ポイントを提供している」と指摘しました。
データセンター市場の成長は依然として堅調
イートンのクレイグ・アーノルドCEOは、第4四半期の決算発表時に「データセンター市場の減速は、実際のデータと一致しない」と述べました。
同氏によると、北米のメガプロジェクト(予算10億ドル以上の建築プロジェクト)の未着手案件は2023年比で33%増加し、2024年末には1兆9000億ドルに達したとされています。さらに、現在着手されているプロジェクトは全体の15%に過ぎず、2025年には過去最多の着手件数が見込まれています。
このような状況からも、データセンター市場が急激に縮小する可能性は低いと考えられます。
アナリスト評価は「買い」が多数派、目標株価の平均は363ドル
イートンのイベントに対する市場の評価は概ね良好で、レイモンド・ジェームズのアナリスト、ティム・ザイン氏は「成長目標は妥当で説得力がある」とし、目標株価を380ドルに設定しました。
ファクトセットによると、イートンの株をカバーしているアナリストのうち68%が「買い」と評価しており、これはS&P500構成銘柄の「買い」推奨比率(約55%)を上回る水準です。アナリストの目標株価の平均は約363ドルとなっています。
年初の株価下落を受け、投資家は今回のイベントと買い推奨格上げが、イートン株の回復のきっかけになることを期待している状況です。