2024年に市場を牽引したテクノロジー株が、2025年に入って大きく下落しています。その影響が顕著に表れたのが、3月10日(月)の米国市場です。特に、大手テクノロジー企業群「マグニフィセント・セブン」は、1日で過去最大の時価総額の減少を記録しました。
この日の急落は、景気後退への懸念や、関税政策、AI関連の投資持続性に対する疑問など、複数の要因が絡み合った結果と考えられています。しかし、長期的な視点では、AI革命の流れは依然として力強く続くとする意見もあります。以下、この日の市場動向と今後の展望について詳しく解説します。
「マグニフィセント・セブン」の時価総額が1日で7590億ドル消失
米国株市場では、大手テクノロジー株が急落し、「マグニフィセント・セブン」に分類される企業の時価総額が、わずか1日で7590億ドルも消失しました。この下落は、2012年5月18日にメタ・プラットフォームズ(META)が上場して以来、過去最大の規模となりました。
特に影響が大きかったのは、テスラ(TSLA)、アップル(AAPL)、エヌビディア(NVDA)の3社です。
- テスラの株価は15.4%下落し、時価総額は1300億ドル減少
- アップルの株価は4.9%下落し、時価総額は1740億ドル減少
- エヌビディアの株価は5.1%下落し、時価総額は1390億ドル減少
アップルとエヌビディアは、テスラよりも時価総額の減少幅が大きく、市場全体への影響も深刻なものとなりました。
AI関連の投資は持続するのか?市場の懸念
この日の市場では、景気後退懸念に加え、AI関連投資の持続性に対する不安も広がりました。特に、半導体市場の中心を担うエヌビディアの株価下落は、AI関連支出の減少を懸念する動きが強まったことを示しています。
ウェドブッシュ証券のアナリスト、ダニエル・アイブス氏は、「AI革命の流れは数年間で変わるものではなく、今後も2兆ドル規模の投資が続く」と指摘しました。アイブス氏は、今回の下落を「長期的な視点で見れば絶好の買い場」と捉えており、エヌビディア、アップル、テスラ、マイクロソフト(MSFT)、パランティア・テクノロジーズ(PLTR)を有望株として挙げました。
依然として割高なテクノロジー株?市場の見方は二分
テクノロジー株のバリュエーションについては、意見が分かれています。
メリウス・リサーチのアナリストは、「エヌビディアの株価は、ChatGPTが登場する前よりも割安になっている」と述べており、依然として成長余地があると見ています。一方で、グレンミードのストラテジストは、「大手テクノロジー株はピーク時よりもプレミアムが下がったとはいえ、依然として高く評価されている」と指摘しました。
2024年にはエヌビディアが171%上昇し、「マグニフィセント・セブン」の中でも圧倒的なパフォーマンスを誇りました。しかし、2025年に入ってからは状況が変わり、メタ・プラットフォームズ以外の6社はすべて下落しています。
- テスラは今年45%の下落と、最も大きなマイナス
- エヌビディアは21%の下落
- メタ・プラットフォームズは唯一プラス圏で、約2%の上昇
マイクロソフトとアマゾンは比較的健闘
3月10日の市場全体の下落率は大きく、ナスダック総合指数(COMP)も4.0%の下落となりました。しかし、「マグニフィセント・セブン」の中では、マイクロソフトとアマゾン・ドット・コム(AMZN)が比較的底堅い動きを見せました。
- マイクロソフトは3.3%の下落
- アマゾンは2.4%の下落
この2社の下落率は市場平均よりも低かったものの、時価総額の観点では、マイクロソフトは980億ドル、アマゾンは500億ドルの減少となりました。
今後の市場動向と投資戦略
今回の下落は、短期的には市場に大きな影響を与えましたが、長期的な視点ではテクノロジー株の成長は続く可能性があります。特にAI関連の需要は依然として高く、企業の設備投資が継続することで、エヌビディアやマイクロソフトなどの業績にプラスの影響を与えることが予想されます。
今後の市場の注目点としては、以下のポイントが挙げられます。
- 米国経済の景気動向:リセッション(景気後退)の兆候が強まれば、テクノロジー株への圧力が続く可能性がある。
- 関税政策の行方:特に中国との関係が再び悪化すれば、半導体業界への影響が懸念される。
- AI投資の持続性:企業の設備投資が減少すれば、エヌビディアなどの半導体企業の売上成長にも影響が出る。
- 金融政策:FRB(連邦準備制度理事会)の利下げのタイミングによって、市場のセンチメントが大きく変化する。
短期的な市場のボラティリティが高まる中、長期的な成長を見据えた投資戦略が求められます。特に、AIやクラウド関連の需要は引き続き拡大する可能性が高いため、押し目買いのチャンスとして検討するのも一つの戦略となります。
2025年の米国株市場は不透明感が増していますが、テクノロジー株の成長ストーリーが崩れるわけではありません。長期的な視点で、慎重に投資判断を行うことが重要です。