エヌビディア(NVDA)の株価が3月10日の米国市場で大幅に下落しました。人工知能(AI)関連の製品需要が引き続き高いことが示されているものの、市場全体の懸念が重しとなった形です。
この日の取引でエヌビディアの株価は5.1%下落し、106.98ドルで取引を終えました。これは昨年9月9日以来の安値であり、S&P 500指数も2.7%の下落となりました。
2025年の株価下落要因と市場の懸念
エヌビディアの株価は年初から20%の下落となっています。この背景には、トランプ大統領の関税政策に対する市場の懸念が影響しています。年初からの下落率としては2022年以来最大で、当時は27%の下落となっていました。
メリウス・リサーチのアナリスト、ベン・レイツェス氏は、エヌビディアをはじめとするAI関連の半導体メーカーやハードウェア企業の株が現在「割安」であり、投資妙味があるとの見解を示しました。しかし、規制や地政学的リスク(関税を含む)に関する不透明感が残るため、短期的には株価の上昇が期待しにくいとも指摘しています。
同氏はエヌビディアの「買い」評価を維持しながらも、2年後の目標株価を従来の195ドルから170ドルに引き下げました。
エヌビディアの株価バリュエーションと市場動向
現在、エヌビディアの株価は、向こう12か月間の予想利益の24.2倍で取引されています。これは過去5年間の平均である40倍を大きく下回っています。
また、市場全体のリスクとして、トランプ大統領が週末に「今年の景気後退を否定しなかった」ことが投資家心理に影響を与えた可能性があります。これにより、AI関連の強い需要があったとしても、エヌビディアの株価を押し上げる材料にはなりませんでした。
その一方で、エヌビディアのAIチップを製造するTSMC(TSM)は、2月の売上が前年同月比で43%増加したと発表しました。このデータは、エヌビディアの製品需要の強さを示唆するものとなっています。
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エヌビディアのAI支援と今後の展望
さらに、エヌビディアは鴻海精密工業(Foxconn)が開発した大規模言語AIモデル「FoxBrain」の支援を行いました。同社の台湾にあるスーパーコンピューターと技術コンサルティングを活用し、AI技術の発展をサポートしています。
今後の見通しとして、エヌビディアは3月18日に開催されるGPU技術カンファレンス(GTC)で、ジェンスン・フアンCEOの基調講演を予定しています。このイベントでは、AI半導体の将来に関する重要な発表が期待されています。
メリウス・リサーチのレイツェス氏は、エヌビディアが長期的にはポジティブな成長を描いていると指摘し、次世代のGPUロードマップについても言及しています。「ブラックウェル・ウルトラ」および「GB300システム」(推論向けに大容量メモリを搭載)、2026年向けの「ルービン」GPU、ArmベースのCPU「Vera」、さらには2027年以降の技術についての情報が発表される可能性があります。
まとめ
エヌビディアの株価は短期的な市場懸念により下落しているものの、AI関連の需要は引き続き堅調であり、長期的な成長の可能性を秘めています。今後のGPU技術カンファレンスでの発表内容が、同社の株価動向にどのような影響を与えるのか注目されます。
*過去記事はこちら エヌビディアNVDA