AIブームの初期の勝者はクラウド企業? コアウィーブのIPOが示す成長の可能性

  • 2025年3月10日
  • 2025年3月10日
  • BS余話

AIブームの中で、初期の勝者となっているのは、AI向けのクラウドサーバーを提供する企業です。特に、アマゾン・ドット・コム(AMZN)、マイクロソフト(MSFT)、アルファベット(GOOGL)の3社がその代表格です。これらの企業は、AIの計算処理を担うハイパースケーラーとしての役割を果たしており、莫大な投資を行っています。

しかし、これらの大手企業のクラウド部門には、ウェブサイト、ゲーム、アプリ向けの従来型サーバーも含まれているため、AIクラウドがどれほどの経済価値を生み出しているのかは財務報告からは見えにくい状況でした。そんな中、このほど公開されたコアウィーブ(CRWV)の新規株式公開(IPO)の目論見書が、その実態を明らかにする鍵となっています。

コアウィーブの成長の背景とは?

コアウィーブは2016年に仮想通貨のマイニング企業として設立されました。しかし、2018年のビットコインの暴落を機に、新たな事業を模索し、AI向けの計算処理サービスを提供するようになりました。

そして、2022年11月にChatGPTが登場したことで、コアウィーブのビジネスは急成長しました。AIの演算処理を専門とする企業として、エヌビディア(NVDA)と並ぶAI関連企業としての地位を確立しました。AIブームの始まりとともに、コアウィーブはベンチャーキャピタルからの注目を集め、これまでに22億ドルの資金を調達し、2024年11月には230億ドルの企業評価額がつけられました。

コアウィーブの財務データが示すAIクラウドの収益性

コアウィーブの2022年から2024年の財務データが公開されたことで、AIクラウドビジネスがどのような構造になっているのかが明らかになりました。その結果、多くの好材料があることがわかりますが、一方で急成長に伴うリスクも存在しています。

まず、ポジティブな面として、AIクラウドビジネスにおいて設備投資はすでに利益を生み出すフェーズに入っていることが挙げられます。サーバーやネットワーク機器の設備投資は4~6年の耐用年数で減価償却されますが、コアウィーブは2024年に8億6300万ドルの減価償却費を計上しながら、売上は19億ドルに達しました。これは前年と比較して737%の増加となっています。

さらに、利益率の高さも注目点です。2024年の営業利益は3億2400万ドルとなり、前年の1400万ドルの赤字から黒字転換を果たしました。2024年第4四半期の年間換算売上は30億ドル、営業利益は4億5100万ドルとなっており、1年間で大きく成長しています。これらの数字は、AIクラウドビジネスがすでに利益を生み出していることを示しています。

ハイパースケーラーがAIに投資を続ける理由

コアウィーブの財務データを分析すると、アマゾン・ドット・コムやマイクロソフト、アルファベットがAIクラウドに莫大な資本を投じている理由が見えてきます。AI向けのクラウドサービスは急成長しており、設備投資が短期間で利益につながる構造になっています。

従来のクラウド事業と比べても、AIクラウドの成長スピードは非常に速く、2022年にはクラウドサービス全体の一部に過ぎなかったものが、わずか2年で大きな割合を占めるようになりました。2023年から2025年にかけての設備投資により減価償却費は増加していますが、それ以上に売上の伸びが大きいため、営業利益は拡大していると考えられます。

AIクラウドビジネスのリスク

一方で、AIクラウドビジネスは急成長する一方で、高いリスクも伴います。設備投資による減価償却費は今後も増加し続けるため、2026年以降の売上成長が鈍化すると、営業利益が圧迫される可能性があります。

コアウィーブにとっては、この成長を持続できるかどうかが大きな課題となります。しかし、大手ハイパースケーラー企業にとっては、AIクラウドのリスクをある程度吸収できる余裕があるため、コアウィーブの成功事例はむしろAI投資に対する安心材料となります。

まとめ

コアウィーブのIPOは、AIクラウドビジネスの収益性がすでに確立されていることを示す重要な指標となりました。わずか2年の間に、AIクラウドは単なる将来の成長分野ではなく、実際に利益を生み出す分野へと進化しています。

今後、アマゾン・ドット・コム、マイクロソフト、アルファベットといったハイパースケーラーが引き続きAIクラウドに巨額の投資を行う中で、その収益性の高さがさらに明確になると思われます。コアウィーブの成功は、AIクラウド市場全体の成長を象徴するものとして、投資家にとって重要なデータとなりそうです。

*過去記事「コアウィーブ上場間近!AIブームを支えるデータセンター企業の魅力とは?

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