コアウィーブ(CRWV)が、早ければ今週にも新規株式公開(IPO)を行う見通しです。AIブームが続く中、投資家にとって注目すべき企業の一つとなっています。コアウィーブは、AIアプリケーション向けのデータセンターを開発・運営する企業であり、その成長性が期待されています。本記事では、コアウィーブの事業内容や成長戦略、投資リスクについて詳しく解説します。
コアウィーブの事業内容と成長戦略
コアウィーブは、米国およびヨーロッパで32のデータセンターを運営しており、25万台以上のグラフィックス・プロセッシング・ユニット(GPU)を稼働させています。その大半はエヌビディア(NVDA)製のGPUであり、エヌビディアはコアウィーブの6%の株式を保有する主要投資家の一社でもあります。この関係性により、コアウィーブはエヌビディアの最新世代のGPUをいち早く導入できる立場にあります。
コアウィーブは、AI計算に特化したプラットフォームを開発し、最先端のハードウェア、高性能ネットワーク、冷却技術を活用しています。このため、大手のハイパースケール企業も同社のデータセンターを利用しており、AI需要の急増に対応できるインフラを提供しています。
コアウィーブの主要顧客と懸念される依存度
コアウィーブは急成長を遂げていますが、その売上の大部分が限られた顧客に依存している点が投資家にとっての懸念材料となっています。2024年の時点で、同社の売上の約77%が上位2社の顧客からのものであり、そのうち62%はマイクロソフト(MSFT)によるものです。
最近、フィナンシャル・タイムズは「マイクロソフトがコアウィーブとの一部契約を撤回した」と報じましたが、コアウィーブはこれを否定し、「契約のキャンセルや約束の破棄は一切なく、このような主張は誤解を招くものだ」との声明を発表しました。
コアウィーブのIPO評価と資金調達計画
ロイターによると、コアウィーブのIPO後の企業価値は350億ドル以上になる可能性があると報じられています。また、ブルームバーグは、同社が約40億ドルの資金調達を目指していると伝えています。
コアウィーブの大手投資家であるスロ・キャピタル(SSSS)の最高経営責任者(CEO)、マーク・クライン氏は、同社の急成長と強固な顧客基盤が投資の決め手だったと語っています。同氏によれば、コアウィーブは150億ドルの契約売上を確保しており、2022年の売上1600万ドルから、2023年には2億2900万ドル、2024年には19億ドルへと急成長しました。
しかし、成長に伴い同社の赤字も拡大しています。2024年の純損失は8億6340万ドルで、2023年の5億9370万ドル、2022年の3110万ドルと比べても大幅に増加しています。また、データセンターの拡大に伴い、約80億ドルの負債を抱えており、2025年に25億ドル、2026年に31億ドルの返済が予定されています。これらの負債返済のため、IPOを通じた大規模な資金調達が必要になると考えられています。
コアウィーブの創業背景と成長の軌跡
コアウィーブは、元ウォール街のヘッジファンドマネージャーおよびトレーダーであるマイケル・イントレーター氏、ブライアン・ヴェントゥーロ氏、ブラニン・マクビー氏の3名によって設立されました。彼らはもともと天然ガスなどのエネルギー投資を専門としていましたが、2017年に仮想通貨マイニングを行う会社としてコアウィーブを創業しました。
当初の社名は「Atlantic Crypto Corporation」でしたが、2019年に仮想通貨市場の価格が急落したことを受け、AI向けの計算インフラ事業に転換しました。この決断が功を奏し、現在のAI市場の成長とともに、同社のデータセンター事業も拡大を続けています。
コアウィーブのIPOが持つ市場への影響
コアウィーブのIPOは、2025年の新規株式公開市場における重要な試金石となるとみられています。複数の大手投資銀行が引受人として参加しており、市場関係者の注目度は非常に高い状況です。
ルネサンス・キャピタルの上級ストラテジストであるマシュー・ケネディ氏は、「コアウィーブは、IPOによって多額の資金を調達し、負債の返済に充てる必要がある」と指摘しています。また、同社のIPOが成功すれば、IPO市場全体の回復を示す重要な指標となる可能性があると述べています。
クライン氏も「コアウィーブは市場の混乱にも動じることなくIPOの手続きを進めており、投資家からの評価が高いことがうかがえる」とコメントしています。
まとめ
コアウィーブのIPOは、AI市場の成長を背景に大きな注目を集めています。同社はエヌビディアの最新GPUを活用し、急速に事業を拡大してきました。売上の大半をマイクロソフトに依存している点や、負債の大きさなどのリスクもあるものの、150億ドルの契約売上を確保していることから、長期的な成長の可能性は十分にあります。
今後のIPO市場の動向を占う意味でも、コアウィーブの新規上場は見逃せないイベントとなります。投資家にとって、このIPOが魅力的な投資機会となるのか、慎重に見極めることが重要です。