米国の半導体大手ブロードコム（AVGO）の株価が、3月6日の時間外取引で急騰しました。これは、同社が発表した2025年度第1四半期（2024年11月～2025年1月）の決算が市場予想を上回ったためです。AI関連銘柄が軒並み売られる中、ブロードコムの好決算は市場に安心感をもたらしています。
予想を超える売上と利益
ブロードコムの2025年度第1四半期の売上は149億2,000万ドルで、ウォール街のアナリスト予想146億2,000万ドルを上回りました。調整後の1株当たり利益（EPS）は1.60ドルで、予想されていた1.51ドルを上回る結果となりました。
また、次の四半期（2025年度第2四半期）のガイダンスも強気の内容でした。ブロードコムは、149億ドルの売上を見込んでおり、アナリストの予想（147億1,000万ドル）を超える見通しとなっています。
ブロードコムのCEOであるホック・タン氏は、決算発表の中で次のようにコメントしました。
「当社の四半期売上と調整後EBITDA（利払い・税引き・償却前利益）は、AI半導体ソリューションとインフラソフトウェアの両方の成長によって記録的な水準に達しました。第2四半期においても、ハイパースケール企業がAI用のXPU（アクセラレーター）およびAIデータセンター向けの接続ソリューションへの投資を続けるため、AI半導体の売上は44億ドルに達すると見込んでいます。」
半導体とソフトウェアの両分野で成長
ブロードコムの事業は、半導体ソリューションとインフラソフトウェアの2つの主要セグメントに分かれています。今回の四半期決算では、半導体ソリューション部門が82億ドルの売上、インフラソフトウェア部門が67億ドルの売上を計上しました。AI関連の需要が急増する中、両事業が順調に成長していることが明らかになりました。
AIチップの競争が激化
決算説明会の中でタンCEOは、大手テクノロジー企業が次世代AIモデルの開発に向けて積極的に投資を続けていると述べました。特に、ブロードコムの上位3社の顧客企業は、2027年末までにAIチップを100万台以上搭載する大規模クラスタを構築する計画を進めているといいます。
この動きは、エヌビディア（NVDA）やインテル（INTC）などの競合企業とともに、AI半導体市場の拡大をさらに加速させる要因となるでしょう。
マーベル・テクノロジーの決算との対照的な動き
一方で、ライバル企業であるマーベル・テクノロジー（MRVL）の決算は投資家の期待を裏切るものでした。マーベルの決算発表後、株価は19.81%下落し、半導体関連ETFであるiShares Semiconductor ETFも4%の下落となりました。この影響を受け、決算発表前のブロードコム株も6%下落していましたが、好決算発表後に一転して時間外取引で16%急騰する展開となりました。
マーベルとブロードコムはともに、ASIC（特定用途向け集積回路）と呼ばれるAI専用半導体を設計する企業ですが、決算内容には明暗が分かれる結果となりました。
＊関連記事「マーベル・テクノロジーの株価が急落｜決算後の市場の反応とは？」
今後の見通しと市場の評価
ブロードコムのAI半導体ビジネスの成長は、多くのアナリストからも高く評価されています。先週、オッペンハイマーのアナリストであるリック・シェーファー氏は、ブロードコムの株価について「アウトパフォーム（買い推奨）」の評価を維持し、目標株価を225ドルに設定しました。
「ブロードコムは、半導体業界において最も戦略的かつ財務的に魅力的なビジネスモデルの1つを持っていると考えている。エヌビディアに次ぐ世界第2位のAI半導体メーカーとしての地位を確立している。」
ブロードコムの半導体は、ネットワーキング、ブロードバンド、サーバーストレージ、ワイヤレス、産業向けなど幅広い分野で利用されており、その中には生成AI向けの半導体も含まれています。AI関連の需要が拡大する中、今後も同社の成長が期待されます。
まとめ
ブロードコムの2025年度第1四半期の決算は、市場予想を超える結果となりました。特にAI半導体部門の成長が著しく、次の四半期に向けても強気の見通しを示しています。一方で、ライバル企業であるマーベルの決算が市場を失望させたことを受け、AI関連半導体市場の中でも企業ごとの差が明確になりつつあります。
エヌビディアがトップを走るAI半導体市場において、ブロードコムがどこまでシェアを拡大できるか、今後の動向に注目が集まっています。
＊過去記事はこちら ブロードコム AVGO