米国の防衛関連企業エアロバイロンメント(AVAV)の株価が3月5日の米国市場で大幅に下落しました。これは、同社が4日の夕方に発表した四半期決算が市場予想を下回る内容だったためです。
特に、ウクライナ関連の売上減少に加えて、カリフォルニア州の山火事が業績に影響を及ぼしたことが失望要因となりました。同社の製造工場がカリフォルニア州にあるため、生産に支障が出たと考えられています。
第3四半期決算、予想を大きく下回る結果に
エアロバイロンメントの第3四半期(2024年11月~2025年1月)の決算は、市場の期待を下回る厳しい結果となりました。
- 営業損失:3.1百万ドル(前年同期は14.3百万ドルの営業利益)
- 売上:1億6,760万ドル(前年同期比10%減、市場予想は1億9,200万ドル)
ウォールストリートのアナリストは、14百万ドルの営業利益を予想していましたが、実際には営業損失となりました。CEOのワヒド・ナワビ氏は、「南カリフォルニアで発生した強風と山火事の影響により、目標達成が困難だった」と述べています。
しかし、同氏は「長期的な成長戦略の実行と将来に向けた耐性構築に向けて大きな進展があった」と前向きな見解も示しました。
過去最高の受注残を記録するも、業績見通しを下方修正
第3四半期の受注残は過去最高の7億6,400万ドルとなり、将来の売上に対する強い基盤があることが示されました。しかし、2025年度の通期見通しは下方修正されました。
- 売上予想:7億8,800万ドル(従来予想は8億1,000万ドル、市場予想は8億2,000万ドル)
- 1株当たり利益(EPS)予想:3.03ドル(従来予想より約30セント低下、市場予想は3.43ドル)
この発表を受け、エアロバイロンメントの株価は5日の取引開始時に13%下落し、123.47ドルとなりました。その後株価は上昇に転じ、下落幅は小さくなりましたが、午前11時の段階でも4%近く下落しています。
ウクライナ需要の減少と政局の影響
エアロバイロンメントは、ウクライナ向けの精密誘導兵器「スイッチブレード」の主要供給企業の1つです。2024年度のウクライナ向け売上は、同社の全売上の約38%を占めていました。
しかし、現在はウクライナ関連の需要が縮小しつつあり、それが売上の減少に影響を与えています。加えて、アメリカの政局の変化により、国防費の削減が懸念されていることも、投資家の不安を高める要因となっています。
アナリストの評価と今後の見通し
今回の決算について、証券アナリストは以下のように評価しています。
- ウィリアム・ブレアのアナリスト、ルイ・ディパルマ氏:「ノイズの多い決算だったが、受注残の増加はポジティブな要素」
- ジェフリーズのアナリスト、グレッグ・コンラッド氏:「短期的な業務上の問題はあるが、長期的には売上成長が期待できる」とし、買い推奨(目標株価230ドル)
エアロバイロンメントの株価は、ロシアのウクライナ侵攻以降、売上が大きく伸びたことで急上昇しました。しかし、最近のウクライナ情勢の変化により、投資家の間で不安が広がっています。
それでも、アナリストの71%が同社の株を「買い」と評価しており、S&P500銘柄の平均的な買い推奨比率(55%)を大きく上回っています。現在のアナリストの平均目標株価は約205ドルとなっています。
今後の注目ポイント
エアロバイロンメントは第4四半期について「記録的な売上を達成する」との見通しを示しており、来年度には成長路線に回帰することを目指しています。
特に、ドローン「Jump-20」や「スイッチブレード」などの防衛関連製品の需要が引き続き堅調であることが、同社の成長を支える要因となりそうです。今後の決算発表と国防政策の動向に注目が集まります。