AI分野への出遅れが逆に強みに!アップルの弱点が強さの源になる理由

人工知能(AI)の急速な進歩は、ここ数年でマグニフィセント・セブン(M7)と呼ばれる大型ハイテク企業の株価を大きく押し上げてきました。そんな中、アップル(AAPL)は、AI分野で出遅れていると見られがちでした。そのため、中国市場ではライバル企業にシェアを奪われ、成長の鈍化が懸念されていました。

実際、2024年のアップルの株価上昇率は30%にとどまり、M7の中ではエヌビディア(NVDA)、メタ・プラットフォームズ(META)、テスラ(TSLA)、アマゾン・ドット・コム(AMZN)、アルファベット(GOOGL)に次ぐ結果となりました。マイクロソフト(MSFT)を除けば、アップルはM7の中で最も低いパフォーマンスを示していました。つまり、AI戦略の遅れが、時価総額が数兆ドル規模の企業にとって弱点と見なされていたのです。

しかし、この弱点が逆に強さの源となる可能性が出てきました。

ディープシークの登場が市場に与えた影響

2025年1月27日、中国のチャットボット「ディープシーク」が登場し、市場に大きな動揺をもたらしました。ある研究論文によると、ディープシークは他のAIモデルに比べ、はるかに少ない半導体チップで動作し、コストも大幅に削減されていると報告されました。この情報には異論もありましたが、それでも投資家の間では「もしAIの生産コストが急激に下がるのであれば、米国のハイテク企業がこれまでのように多額の資金をAI技術に投じる必要がなくなるのではないか?」という懸念が広がりました。

これに対し、多くの企業はAIへの投資や開発戦略の正当性を投資家にアピールする動きを見せました。しかし、アップルはAIへの依存度が比較的低かったため、こうした混乱の影響をあまり受けませんでした。

アップルがM7の「安住の地」となった理由

メリウス・リサーチのテクノロジー・リサーチ責任者であるベン・ライツェス氏は、ディープシークの騒動以降、「アップルはマグニフィセント・セブンの中で安定した立場を確保した」と分析しています。

実際、アップルの株価は過去1カ月間ほぼ横ばいで推移しているのに対し、マグニフィセント・セブンの株価に連動する上場投資信託(ETF)は9%も下落しています。

この相対的な強さの背景には、以下のような要因があります。

AIコストの低下が追い風に

ディープシークの開発コストがわずか500万ドルだったという主張には異論がありますが、AI関連技術のコストが急速に下がっていることは事実です。これにより、AI分野への莫大な投資を行わずに済むアップルは、競争上の優位性を持つことになりました。

ライツェス氏は、「アップルは大規模な設備投資を行わずに、クラウドを活用してAIを運用することでコストを抑えることができる。その結果、サービス部門の利益率は向上するだろう」と述べています。

AI技術の普及がスマートフォン市場を押し上げる可能性

AI技術がより安価に、そして広く普及すれば、企業や個人の利用が増加する可能性があります。これまでパソコンやタブレットで行われていた作業がスマートフォンで行えるようになれば、より高性能なiPhoneに対する需要が高まり、結果としてiPhoneの平均販売価格(ASP)の上昇が期待されます。

ティム・クックCEOの経営手腕

地政学的なリスクが高まり、関税問題などの不確実性が続く中でも、アップルの株価が安定している点について、ライツェス氏は「ティム・クックCEOの卓越した経営手腕が投資家の不安を和らげている」と評価しています。

さらに、アップルは世界トップクラスのフリーキャッシュフローを誇り、必要に応じて自社株買いを行う余力を持っています。これが市場の安心感につながっていると指摘されています。

米国内への投資計画が市場の信頼を強化

2025年初め、アップルは今後4年間で5,000億ドル以上を米国内で投資する計画を発表しました。バンク・オブ・アメリカのアナリストであるワムシ・モーハン氏によると、この投資には「研究開発、データセンター、ヒューストンの新しい製造施設、サプライチェーンの強化、従業員の研修、Apple TV+向けのオリジナルコンテンツ制作」などが含まれている可能性が高いと指摘されています。

これらの計画の多くは以前からアップルの支出計画に組み込まれていたものですが、同社は投資の一部を米国にシフトさせた可能性があると見られています。

まとめ

AI市場におけるアップルの遅れは、一見すると弱点のように見えました。しかし、ディープシークの登場によってAIのコスト削減が進む中、アップルは過度な設備投資を行わずに済むというメリットを享受できる立場にあります。

さらに、スマートフォン市場へのAI技術の浸透が進めば、iPhoneの需要が高まり、売上の押し上げにつながる可能性があります。

また、ティム・クックCEOの手腕や潤沢なフリーキャッシュフロー、米国内への大規模投資計画などが、投資家の安心感につながっています。

これらの要因が重なり、アップルはマグニフィセント・セブンの中で「安定した投資先」としての地位を確立しつつあります。

*過去記事はこちら アップル AAPL

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