モバイルアプリの売上を支援する広告テクノロジー企業アプラビン(APP)の株価が、2月26日の米国市場で急落しました。2024年に最も劇的な上昇を遂げた銘柄の一つである同社ですが、空売り筋による批判的な報告を受け、26日の朝の取引で大きく値を下げています。
アプラビンの株価は7日続落、約38%の急落に
アプラビンの株価は2月14日に過去最高値の510.13ドルを記録しましたが、その翌日から連続で下落し、現在7日続落しています。2月14日の終値から38.4%下落しており、この連続下落は2022年12月以来の最長記録となっています。
また、2月26日の取引では一時16.7%の急落を記録し、約3か月ぶりの安値をつけました。これにより、同社の時価総額は1735億ドルから大幅に減少しました。
空売り筋の批判とその影響
アプラビンに対する空売りを仕掛けたのは、投資リサーチ会社のカルパー・リサーチです。同社は、アプラビンのビジネスモデルについて2つの懸念を指摘し、空売りを行ったと発表しました。
- eコマースプログラムの価値への疑念
アプラビンのプラットフォームに参加する広告主にとって、同社の提供する価値がどれほどのものなのか疑問視されています。 - アプリのインストール手法に関する批判
同社が「ギミック」を使い、ユーザーのスマートフォンに対してサイレントでアプリをインストールさせる手法を取っていると指摘されています。
さらに、別のリサーチ会社であるFuzzy Panda Researchも、アプラビンのeコマース事業についてメタ・プラットフォームズ(META)のデータをコピーしたものに過ぎないと指摘し、空売りを行っています。
株価の急落にもかかわらず、ウォール街の評価は依然として強気
アプラビンの株価は急落しているものの、ウォール街のアナリストの多くは依然として強気の見解を示しています。ファクトセットによる調査では、同社をカバーする27人のアナリストのうち20人(74%)が「買い」推奨、6人が「中立」、1人だけが「売り」としています。
また、アナリストの平均目標株価は541.82ドルとされており、現在の株価水準から約73%の上昇が見込まれています。これは、過去最高値の終値510.13ドルを超える水準となります。
2024年のアプラビンの株価急騰の背景
2024年、アプラビンの株価は1年間で432%上昇し、投資家の間で熱狂的な人気を博しました。この急成長の要因として、以下の点が挙げられます。
- 人工知能(AI)を活用した広告パーソナライゼーションの向上
AI技術を駆使し、広告のターゲティング精度を向上させたことが、企業の売上成長に寄与しました。 - モバイルゲーム部門の売却
収益性の低いモバイルゲーム事業から撤退し、広告事業に集中する戦略を取ったことが投資家の評価を高めました。
S&P500の構成銘柄入りは見送られるも、高いパフォーマンスを維持
2024年末の市場のリバランスにおいて、S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスはアプラビンをS&P500指数の構成銘柄に加えない判断をしました。しかし、それにもかかわらず、同社のパフォーマンスはS&P500を大きく上回る水準を維持しています。
今後の見通し
現在、アプラビンは空売り筋の批判を受けて株価が急落していますが、AI技術を活用した広告テクノロジーの進化により、今後も成長が期待されています。アナリストの目標株価を考慮すると、現在の下落は一時的な調整の可能性もあります。
投資家にとっては、短期的な変動を乗り越えた後、長期的な成長のポテンシャルを持つ銘柄として再評価されるかどうかが注目されるところです。