エヌビディア(NVDA)は、AIチップ市場で圧倒的な存在感を誇る企業であり、最新の決算発表を2月26日に控え、市場の注目が集まっています。ウォール街のアナリストたちは、これまでの四半期と同様の大幅な売上の上振れを期待していないものの、依然としてエヌビディアの成長見通しに対して強気の姿勢を維持しています。
エヌビディアは移行期にある
エヌビディアは現在、新しいブラックウェルプラットフォームへと移行する過渡期にあります。これまでのGrace/Hopper(グレース/ホッパー)ファミリーの販売が続いているものの、ブラックウェルの供給は当初限られると見られています。
パイパー・サンドラーのハーシュ・クマール氏は、エヌビディアの最新四半期の売上が予想を上回る18億ドル程度になると見込んでいます。同氏は「エヌビディアは2025年のカレンダーイヤーで完売状態が続いており、今後の四半期で大きな上振れが期待できる」と述べています。同氏の目標株価は175ドルに設定されています。
ブラックウェルの本格稼働は2025年前半から中頃に
エバコアISIのアナリスト、マーク・リパシス氏は顧客向けのメモで、ブラックウェルの本格的な生産開始が2025年前半から中頃にずれ込む可能性があると指摘しました。しかし、これはエヌビディアにとって大きな問題ではないとしています。
一部のハイパースケーラー(大規模クラウド事業者)はエヌビディアからの購入を抑えると予想されるものの、同社のグラフィックス・プロセッシング・ユニット(GPU)の需要は引き続き供給を上回っています。もしB100(ブラックウェルシリーズの一部)が十分に供給されない場合、現行のH100(ホッパーシリーズの一部)が引き続き購入されると見られます。
株価の動向と市場の期待
エヌビディアの株価は、2月24日に2.6%下落し、3営業日連続での下落となりました。前四半期決算では、ウォール街の予想を19億ドル上回る350億8000万ドルの売上を達成しましたが、その前の四半期はアナリストの期待ほどの売上上振れがなかったため、株価が下落しました。
トゥルイスト証券のアナリスト、ウィリアム・スタイン氏は、134ドル前後で取引されているエヌビディアの株価について「割安に見える」と述べています。同氏の試算では、現在の株価は同社の2026年1月決算のコンセンサス予想に対し、約25倍の水準で取引されているとのことです。同氏は目標株価を204ドルに設定しています。
市場ではこれまで、20億ドルの売上上振れや20億ドルのガイダンス上振れといった強気のシナリオが当たり前になっていました。しかし、今四半期の売上予想は380億8000万ドル、1株当たり利益(EPS)は0.83ドルとされており、これまでよりも緩やかな上振れが期待されています。
ディープシークの影響は限定的か
最近、中国の新興企業が旧世代のエヌビディア製チップを用いて、低コストでAIサーバーを構築したという報道がありました。このディープシークのニュースが、エヌビディアの競争環境に影響を与えるのではないかと懸念する投資家もいます。
しかし、主要なクラウド企業やソーシャルメディア企業は、2025年のAI設備投資計画を引き上げています。アマゾン(AMZN)、アルファベット(GOOGL)、メタ(META)などの企業は、AI分野への投資を強化しており、エヌビディアの長期的な需要を支える可能性があります。
エバコアISIのリパシス氏は、多くのAIエンジニアと話した結果、「ディープシークの技術革新は革命的というよりは進化的なものだ」との見解を示しています。
2025年後半には成長が加速か
リパシス氏は、エヌビディアが今四半期に大幅な業績改善を達成する可能性は低いとしながらも、2025年後半には成長が加速すると予測しています。同氏によると、エヌビディアの株価は今後12か月の業績予想の30倍で取引されており、AI関連銘柄の中では最も割安な水準にあるとのことです。同氏は目標株価を190ドルに再設定しています。
エヌビディアは、2025年後半に向けてブラックウェルシリーズの供給が拡大することで、より大きな上振れを実現できると期待されています。AI市場の成長が続く中で、同社の株価にもポジティブな影響が及ぶ可能性が高いと見られています。
まとめ
エヌビディアは現在、ブラックウェルプラットフォームへの移行期にあり、短期的な売上の大幅な上振れは期待しにくい状況です。しかし、AI市場の拡大と主要企業の設備投資の増加を背景に、2025年後半には成長が加速する可能性があります。
ウォール街のアナリストの間では、エヌビディアの株価は割安と評価されており、長期的な成長を見据えた投資家にとって、依然として魅力的な銘柄であると言えます。今後の決算発表や、ブラックウェルの本格稼働のタイミングに要注目です。
*過去記事はこちら エヌビディアNVDA