モンゴDBがVoyage AIを買収、AIアプリケーション開発の強化へ

  • 2025年2月25日
  • 2025年2月25日
  • BS余話

米国のデータベース企業 モンゴDB(MDB) は、企業が人工知能(AI)を活用したアプリケーションをより迅速に開発できるようにするため、Voyage AI を現金と株式による総額 2億2000万ドル で買収すると発表しました。

ニューヨークを拠点とするモンゴDBは、この買収を通じて、企業向けのリアルタイム運用データとVoyage AIの検索ツールを統合し、より高品質なAIの出力を実現することを目指しています。これにより、顧客はAIアプリケーションを開発しやすくなり、より多様な用途に活用できるようになります。モンゴDBは、アルファベット(GOOGL)マイクロソフト(MSFT)アルテリックス(AYX)アマゾン・ドット・コム(AMZN)デロイトIBM(IBM) などの企業に対し、データ管理やアプリケーション開発の支援を行っています。

モンゴDBの最高経営責任者(CEO)であるデヴ・イッティケリア氏は、「今回の買収によって、顧客がAIの誤情報(ハルシネーション)のリスクを軽減し、アプリケーションの出力をより信頼できるものにすることを目指している」と述べています。

Voyage AIとは?その技術と強み

カリフォルニア州パロアルトに拠点を置く Voyage AI は、スタンフォード大学のテンギュ・マ氏が2023年に設立したスタートアップ企業です。同社は、埋め込みモデル再ランキングモデル の開発に注力しており、これらの技術を活用することで、AIが適切な情報を取得しやすくなります。

Voyage AIの技術は、テキスト、画像、動画、音声ファイルなどの非構造化データ を対象に検索を行い、適切な情報をAIの応答生成の前に取得する役割を果たします。これにより、AIの回答精度が向上し、誤った情報を出力するリスクを低減できます。すでに アンソロピックLangChainHarvey.AIReplit などの企業がVoyage AIのモデルを採用していることが明らかになっています。

Voyage AIの創業者であるマ氏は、「私たちの技術は図書館の司書が情報を検索するのと同じような役割を果たす。まず検索と探索を行い、その後、AIが応答を生成するだ」と述べています。

「検索強化型生成」の重要性とモンゴDBとの相性

近年、企業はAIを独自のデータに適用したいと考えているものの、誤情報の出力には慎重な姿勢を取っています。こうした状況の中で、Voyage AIの技術は「検索強化型生成」として注目されています。この技術は、AIが生成するコンテンツの正確性を向上させるもので、企業が信頼性の高いAIアプリケーションを開発する上で欠かせない要素となっています。

モンゴDBの買収前から、Voyage AIには スノーフレーク(SNOW)データブリックス などのデータ企業が投資を行っていました。Voyage AIに初期投資を行ったベンチャーキャピタル企業Convictionの創設者であるサラ・グオ氏は、「Voyage AIの技術は、正確な情報検索を可能にし、信頼性の高いAIアプリケーションの構築を支援する」と述べています。

Voyage AIは、検索ツールを完成させるためにリアルタイムのデータライブラリへのアクセスを必要としていました。その点で、モンゴDBの ドキュメント型データベース は、非構造化データと構造化データの両方を処理できるため、Voyage AIの技術との相性が非常に良いとされています。マ氏は「モンゴDBは、Voyage AIのモデルが最適化して検索する非テーブルデータを処理する世界最高のデータベースだ」と評価しています。

モンゴDBのAI分野での取り組みと今後の展望

モンゴDBは、今回の買収以前からAI技術を活用したソリューション開発に取り組んでいました。同社のウェブサイトによると、ノボ・ノルディスク(NVO)はモンゴDBを活用して、臨床研究報告書のコンパイル時間を12週間から10分に短縮するアプリケーション を開発しました。

イッティケリア氏は、「この開発を自力で行った場合、はるかに長い時間がかかっていただろう」と語っています。さらに、「AIアプリケーションの市場は今、大きな成長の可能性を秘めている。今回の買収を通じて、私たちはこの分野で大規模なビジネスを構築するチャンスを得たと考えている」と述べています。

マ氏は、Voyage AIの検索ツールについて、「法律、金融、コーディング の分野向けにまず微調整を行い、その後、他の用途へ拡大していく計画だ」と説明しています。また、Voyage AIの埋め込みモデルと再ランキングモデルは、引き続き Voyage AI、AWS Marketplace、Azure Marketplace を通じて提供され、モンゴDBとの統合が2025年後半 に開始される予定です。

イッティケリア氏は、「私たちは今、AIアプリケーションの発展初期 にある。この分野の進化に対応するため、モンゴDBとVoyage AIが協力していくことが、顧客のニーズに応える最善の方法だと考えている」とコメントしています。

まとめ

モンゴDBのVoyage AI買収は、AIアプリケーションの開発を加速させる重要な動きといえます。Voyage AIの検索強化型生成技術とモンゴDBのデータ管理能力が組み合わさることで、企業はより正確で信頼性の高いAIアプリケーション を構築できるようになります。

今後、Voyage AIの技術は法律や金融、コーディングといった分野から応用が広がり、モンゴDBとの統合が進むことで、AIアプリケーション開発の新たなスタンダードが生まれる可能性があります。

モンゴDBはすでに多くの大手企業と連携しており、AI市場の成長に伴い、その影響力はさらに拡大していくことが予想されます。今後の動向に注目が集まる中、モンゴDBとVoyage AIがどのように技術を融合し、AIの進化を加速させるのかが鍵となります。

*過去記事「好業績でも急落!モンゴDBの株価下落の理由とは?

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