アップル(AAPL)は2月24日、米国内での製造能力を強化するために5000億ドルを投じる計画を発表しました。数日前にティム・クック最高経営責任者(CEO)はドナルド・トランプ大統領と会談を行っていました。この計画では、今後4年間で2万人の雇用を創出し、人工知能(AI)システム「Apple Intelligence」を支える新たな施設建設も含まれています。
5000億ドルの投資計画とその詳細
アップルはすでに米国内で290万人を雇用していますが、今回の2万人の追加雇用により、同社の米国内雇用は約0.7%増加します。ただし、新たな雇用の大半は製造業ではなく、「研究開発、シリコンエンジニアリング、ソフトウェア開発、AIおよび機械学習」に関わるエンジニア職とされています。
クック氏は、「この大規模な投資は、米国のイノベーションの歴史に新たな素晴らしい1ページを書き加える」と述べました。一方、トランプ大統領も自身のSNSで「この投資は我々の取り組みに対する信頼の証だ」と発言しています。
米国での新たな製造拠点とデータセンター計画
アップルの投資計画の一環として、ヒューストンにAI関連のデータセンターを支える新たな製造工場を建設する予定です。この施設では、契約製造業者と協力し、「Apple Intelligence」の一部を担うサーバーの組み立てを行います。アップルはすでにMac Proの組み立てを米国内で行っていますが、ヒューストンの新工場はより大規模なものとなる見込みです。
この新工場は約25万平方フィートの広さで、2026年に開設予定です。ただし、これらのサーバーを稼働させるメインチップなどの多くの部品は依然として海外で生産されるため、関税の対象になる可能性があります。
また、アップルはデトロイトに「Apple Manufacturing Academy」を開設し、中小企業向けにAIやスマート製造技術の導入を支援するコンサルティング業務を行う予定です。この取り組みについて具体的な投資額は公表されていません。
アップルの狙いとトランプ大統領の関税政策への対応
アップルは長年にわたり、中国でのiPhone製造に依存してきましたが、トランプ大統領が掲げる輸入関税引き上げ政策の影響を受ける可能性があります。今回の投資計画は、こうしたリスクを回避する戦略の一環と考えられます。過去にもアップルはトランプ政権時に関税免除を受けており、今回の発表も同様の狙いがあると見られます。
ウェドブッシュ証券のアナリスト、ダン・アイブ氏は「クック氏とその同僚による戦略的な動きであり、米国および世界の製造戦略の多様化を進めるとともに、トランプ大統領の米国投資テーマにも適応したものだ」と述べています。さらに、同氏はアップル株の目標株価を325ドルとし、現在の株価から43%の上昇余地があるとしています。
投資家の反応と市場の動き
この大規模投資計画の発表にもかかわらず、投資家の反応は限定的でした。アップルの株価は24日の米国市場の開始直後に0.6%下落しました。しかし、その後徐々に値を上げ、午前10時30分過ぎの段階では0.6%高の247ドルあまりで取引されています。
発表された5000億ドルの投資のうち、新規の米国向け資金がどれほど含まれるかについては明確にされていません。過去の投資計画を振り返ると、アップルは2018年に米国への新規投資として3500億ドルを発表し、その後2021年にさらに800億ドルを追加し、総額を4300億ドルとしました。しかし、ノースカロライナ州に計画されていた研究キャンパスは昨年中止されるなど、必ずしもすべての計画が実行されるわけではありません。
まとめ
アップルは米国内での製造能力を強化し、AI関連事業の拡大を進めるために5000億ドル規模の投資を発表しました。この計画には、新たなデータセンターや製造施設の建設、エンジニア職の雇用創出が含まれています。しかし、投資の多くがすでに計画されていたものであり、どの程度の新規投資が行われるのかは不透明な部分もあります。
今後、アップルの動向とともに、トランプ政権の政策がどのように影響を与えるのかが注目されます。
*過去記事はこちら アップル AAPL