米国最大の公的年金であるカリフォルニア州公務員退職年金(カルパース:CalPERS)は、最近の証券取引委員会(SEC)への提出書類を通じて、大きな投資調整を行ったことを明らかにしました。特に、半導体メーカーのエヌビディア(NVDA)の株式を売却し、通信会社のAT&T(T)や電気自動車メーカーのリヴィアン・オートモーティブ(RIVN)の株式を買い増しました。また、サーバーメーカーのスーパー・マイクロ・コンピュータ(SMCI)の株式を売却したことも公表しました。
カルパースは電子メールを通じて、「グローバルな公共株式は、主に定量的かつシステマティックな投資アプローチで運用されています。そのため、個々の保有銘柄や取引については通常コメントしません」と述べています。カルパースの運用資産は5,000億ドル以上に達しており、これは米国の公的年金の中で最大規模となっています。
エヌビディアの株式を560万株売却
エヌビディアの株価は2024年に171%急騰し、S&P500種株価指数の23%上昇を大きく上回りました。しかし、2025年に入ってからはほぼ横ばいの状態が続いています。1月下旬には、中国の人工知能(AI)プラットフォーム「ディープシーク(DeepSeek)」が米国のAIモデルよりも低コストで高性能であることが報じられた影響で、エヌビディアの株価は一時急落しました。その結果、米国のテクノロジー企業がエヌビディアのチップを含むAI関連ハードウェアに、これまでと同じように多額の投資を続けるかどうか懸念が生じました。しかし、その後、株価は徐々に回復しています。
カルパースは第4四半期にエヌビディアの株式を560万株売却し、5,970万株を保有する形で四半期を終えました。
スーパーマイクロの株式を25.6万株売却
スーパー・マイクロ・コンピュータの株価は2024年に7.2%上昇し、2025年に入ってからは84%もの大幅上昇を記録しています。同社の株式は過去数カ月間で大きく変動し、一時は空売りレポートの標的となり、ナスダックによる上場廃止の危機にも直面しました。現在も四半期決算の提出が遅れている状況ですが、同社の将来に対する楽観的な見方が投資家の間で広がっています。
カルパースは第4四半期にスーパーマイクロの株式を25万6,743株売却し、保有株数を61万4,287株に減らしました。
AT&Tの株式を買い増し
AT&Tの株価は2024年に36%上昇し、2025年に入ってからも17%の上昇を記録しています。同社の株価上昇は、メディア分野への進出を断念したことに加え、最近の好調な業績報告が後押ししています。特に、加入者数の増加が明るい材料となっています。
カルパースは第4四半期にAT&Tの株式を420万株売却し、保有株数を2,520万株に減らしました。
リヴィアンの株式を20.8万株買い増し
電気自動車メーカーのリヴィアンの株価は2024年に43%下落し、2025年に入ってからも2.5%の下落が続いています。昨年、フォルクスワーゲンからの数十億ドル規模の資金注入によって経営の安定が期待されましたが、一部の投資家が予想していた買収は実現しませんでした。
2月上旬には、リヴィアンがこれまでの主要顧客であるアマゾン・ドット・コム(同社の株式を約16%保有)以外の企業に電気配送バンを販売する計画を発表し、一時的に株価が上昇しました。しかし、第4四半期の決算発表後、株価は再び下落しています。
カルパースはリヴィアンの株式を20万8,326株買い増しし、保有株数を130万株に増やしました。
まとめ
カルパースは、エヌビディアやスーパーマイクロの株式を売却する一方で、AT&Tやリヴィアンの株式を買い増すなど、ポートフォリオの調整を行いました。これらの取引は、同年金基金が市場の変動に適応しながら、リスク分散を図る戦略の一環と考えられます。特に、エヌビディアのようなハイテク株の一部を削減し、通信やEV分野にシフトする動きは、長期的な投資戦略の変化を示唆している可能性があります。
2025年の米国株市場は引き続き変動の激しい局面が続くと見られており、カルパースの動向は機関投資家や個人投資家にとって重要な参考材料となりそうです。