米国の小売大手ウォルマート(WMT)が、3年ぶりに四半期利益が前年同期比で減少するとの見通しを発表しました。この業績見通しは市場予想を下回るもので、投資家の期待を裏切る内容となりました。その影響で、ウォルマートの株価は2月20日の米国市場で大きく下落しました。
ウォルマートの業績見通しと株価の動向
ウォルマートは、2025年度第1四半期の調整後1株当たり利益(EPS)が57~58セントになると予想しました。前年同期の60セントから減少し、市場コンセンサスの64セントを下回る予想となっています。
この発表を受け、ウォルマートの株価は20日の市場で6.5%下落しました。この下落は、株価が過去最高値を更新したわずか4日後のことであり、2023年11月16日に8.1%下落して以来最悪の日となりました。また、ウォルマートの業績懸念は、小売業全体にも波及し、コストコ・ホールセール(COST)は2.6%、ターゲット(TGT)は2%それぞれ下落しました。一方、S&P500指数(SPX)は0.4%の下落にとどまりました。
収益性の低い商品の需要が増加し、利益率が低下
ウォルマートのダグ・マクミロン最高経営責任者(CEO)は決算後のアナリスト向け会見で、利益率の低い商品への需要が増えていることを指摘しました。特に、食料品と薬局事業を含むヘルス&ウェルネス部門が成長し、利益率の高い一般商品への需要が減少していることが、業績の重しになっていると述べました。
ジョン・デイビッド・レイニー最高財務責任者(CFO)によると、米国市場では食料品の売上が好調で、既存店売上高の全体の伸び率が4.6%だったのに対し、食料品の伸び率は1桁台半ばでした。さらに、ヘルス&ウェルネス部門は「GLP-1関連の売上が大きく寄与した」とし、10%台半ばの成長を記録しました。
2026年度通期のEPS予想は市場予測を下回る
ウォルマートは2026年度通期の調整後EPSを2.50~2.60ドルと予想しています。これは2025年度の2.51ドルを上回るものの、市場コンセンサスの2.77ドルを下回る見通しです。
レイニーCFOは、「比較的安定した経済環境を前提とした予想であるが、消費者行動や政治情勢の不確実性を考慮する必要がある」と述べました。また、売上成長率の見通しには、2024年がうるう年だったことによるマイナスの影響や、同社が2024年2月20日に買収を完了したVizioの売上増加が含まれています。
投資家はウォルマートの下方修正を過度に懸念する必要はない?
ウォルマートの業績見通しに対する市場の反応は厳しいものとなりましたが、一部のアナリストは「過度に悲観する必要はない」と指摘しています。
ジェフリーズのアナリストであるコーリー・ターロウ氏は、「ウォルマートの見通しに落胆すべきではなく、株価下落を買いの機会とすべきだ」とコメントしました。さらに、「経営陣は2025年を“予想を上回る年”にすることを目指している」と述べています。
また、D.A.ダビッドソンのマイケル・ベイカー氏は、「ウォルマートは最近、予想を上回る業績を発表した後、次の四半期のガイダンスを低めに見積もる傾向がある」と指摘し、「今回もそのパターンに当てはまる可能性が高い」と分析しました。
2025年度第4四半期の業績:売上・EPSは市場予想を上回る
ウォルマートの1月31日までの第4四半期の売上は、前年同期比4%増の1,788億3,000万ドル、総売上は4.1%増の1,805億5,000万ドルとなりました。これは市場予想の1,787億1,000万ドルを上回る結果でした。
ウォルマート米国の売上は5%増の1,235億ドルで、市場予想の1,229億5,000万ドルを上回りました。また、既存店売上高は4.6%増となり、予想の4.4%増を上回りました。特に、サムズクラブの既存店売上高は6.8%増と、市場予想の5%増を大幅に超えました。
純利益とEPSの推移
当期純利益は、前年同期の54億9,000万ドル(1株当たり68セント)から52億5,000万ドル(1株当たり65セント)に減少しました。しかし、投資の未実現損失などの非経常項目を除いた調整後EPSは60セントから66セントに増加し、市場予想の65セントを上回る結果となりました。
配当の増額と利回りの比較
ウォルマートは年間配当を83セントから94セントに引き上げました。3月21日現在の株主には、4月7日に1株当たり23.5セントの四半期配当が支払われます。現在の株価に基づく新配当率は0.97%であり、ターゲットの3.46%やS&P500の1.25%と比較すると、低い水準となっています。
今後の投資戦略
ウォルマートの株価は過去3カ月で11.4%上昇しており、ターゲットの6.2%、S&P500の3%を上回るパフォーマンスを見せています。しかし、今回の業績見通し下方修正により、一時的な調整局面を迎えています。
ウォルマートは、食料品とヘルス&ウェルネス分野での成長を維持しながら、利益率の高い一般商品の売上を改善することが今後の課題となります。投資家にとっては、短期的な株価変動に左右されず、長期的な成長戦略を見極めることが重要です。
市場はウォルマートのガイダンスを厳しく評価しましたが、過去の実績から見ても、慎重な予想を発表した後に上方修正する傾向があるため、長期的な視点での投資判断が求められています。