クアルコムに打撃?アップルの自社製モデム搭載で5Gチップ市場に変革の兆し

米国のテクノロジー大手、アップル(AAPL)が2月20日にiPhone 16eの予約受付を開始すると発表しました。iPhone 16eは、599ドルから販売される予定で、同社の人工知能(AI)アプリケーション「Apple Intelligence」を活用したいユーザーにとって最も手頃な選択肢となります。

この新モデルの最大の特徴の一つは、アップルが独自に設計したモデムチップ「C1」を採用している点です。これまでのiPhoneでは、クアルコム(QCOM)のモデムが使用されていましたが、iPhone 16eはアップル製モデムを搭載した初のデバイスとなります。アップルは、「C1」はiPhone史上最も電力効率が高く、バッテリー寿命の向上に貢献すると発表しました。

アップルの自社製モデムへの移行とその意義

ウォール街では、アップルがクアルコムとの関係を見直し、自社製モデムを採用することは以前から予想されていました。モーニングスターのアナリストであるウィリアム・カーウィン氏は、この発表について「我々にとって最大のニュース」と述べ、将来的にアップル製モデムがiPhoneの不可欠な要素となる可能性が高いと指摘しました。

アップルがモデムを内製することは、外部企業とのライセンス契約にかかるコストを削減し、長期的な利益率向上につながると考えられています。BofA証券のアナリストであるワムシ・モハン氏は、「モデムやその他のコンポーネントの自社生産は、売上総利益率の向上を促す」と述べています。

TDカウエンのアナリストであるクリシュ・サンカー氏も、これはクアルコムとの提携からの段階的な移行の始まりであり、iPhoneの利益率向上に寄与すると分析しています。

クアルコムへの影響と今後の展開

クアルコムは2023年、2026年までiPhone向け5Gチップを供給する契約をアップルと結びました。2024年度のクアルコムの売上では、アップル、サムスン、シャオミがそれぞれ10%以上を占めると見込まれています。

しかし、アップルが自社製チップの開発を進めていることは業界内では公然の事実でした。2019年には、インテル(INTC)のモデムチップ事業を10億ドルで買収し、モデム技術の内製化に向けた取り組みを本格化させています。

クアルコムも11月の10-K提出書類で、「顧客が垂直統合を進めた場合、特に半導体事業において当社の事業が影響を受ける可能性がある」と述べていました。キーバンクのアナリストであるジョン・ヴィン氏は、「アップルが2025年に約4,000万台、2026年に1億台、2027年には2億台のiPhoneに内蔵モデムを採用する計画を進める」と予測し、クアルコムの1株当たり利益(EPS)に対して1.55~1.65ドルのマイナス影響があると試算しています。

一方、クアルコムは「当社の最先端の5G-Advancedモデム-RFシステムは、現在最高の商用スマートフォンに採用されており、AIを活用して各国の最速かつ最大容量のネットワークに最適化されている」と述べています。

クアルコムの未来:スマートフォン依存からの脱却

クアルコムは、スマートフォン市場への依存から脱却し、多角化を進めています。11月に開催された投資家向け説明会では、2029年までにパーソナルコンピュータ事業で40億ドルの売上を目指す方針を示しました。

クアルコムの最高経営責任者(CEO)であるクリスチアーノ・アモン氏は、「現在のクアルコムは、かつてのクアルコムとは異なる。自動車、パーソナルコンピューティング、空間コンピューティングなど、モバイル以外の分野にも進出し、新たなパートナーと協力している」と述べています。

アップルが独自モデムの開発を進める一方で、クアルコムはスマートフォン以外の市場における成長戦略を強化しており、今後の両社の動向が注目されます。

*過去記事はこちら アップル AAPL

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