アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)の前四半期の業績予想が市場の期待を下回ったことで、ウォール街ではAIチップ市場における同社の成長可能性に不安の声が上がっています。しかし、ベンチマーク・リサーチはAMDの競争力が高まっていると評価し、強気の姿勢を維持しています。
ベンチマークのアナリスト、コディ・アクリー氏はAMDの「買い」の格付けを再表明し、目標株価を170ドルとしました。同氏は、AMDの最高財務責任者(CFO)ジーン・フー氏とのファイヤーサイド・チャットを経て、AMDの市場での地位に対する確信を強めたと述べています。
AI市場での競争力が向上 エヌビディアとの差を縮める
前四半期において、AMDのデータセンター向け売上はウォール街の予想を下回り、AIチップの個別予測も中止されたことで、アナリストの間で懸念が広がりました。しかし、AMDは次世代AIチップ「MI350」の発売を2025年後半から2025年半ばに前倒しすると発表しました。
また、競合であるエヌビディア(NVDA)の「Blackwell」チップの過去の延期と相まって、AMDにとっては追い風となっています。アクリー氏は「AMDが競争力の差を縮めていることを示している」と指摘しています。AI市場においてエヌビディアが依然として支配的な地位を占める中、AMDが開発スピードを加速させていることは、今後の競争環境に大きな影響を与える可能性があります。
PC・サーバー市場でのシェア拡大が進行中
AMDはAIチップ市場だけでなく、PCおよびサーバー市場でも着実にシェアを拡大しています。ベンチマークは特に、インテル(INTC)に対するPCおよびサーバー市場でのシェア拡大に注目しています。
加えて、デル・テクノロジーズ(DELL)の法人向けPC事業がAMDの成長を後押ししていることも指摘されています。デルのビジネスがAMDに与える影響について、アクリー氏は「デルの法人向けPC事業の立ち上がりだけで、商用PC市場におけるAMDのシェアは大幅に増加するはずだ」とコメントしています。
また、インテルの最近のコメントにより市場に不安が生じている点にも言及しました。特に、中国製製品に対するトランプ大統領の関税措置を前に、PCメーカーがチップの在庫を大量に購入しているとの指摘があります。しかし、アクリー氏は「AMDにはこの現象は見られない」と述べ、同社が第4四半期に顧客からの追加発注を受けた形跡はないとしています。
株価の動向と今後の展望
2月18日の米国市場では正午過ぎの段階でAMDの株価は0.6%高の113.82ドルと小幅に上昇しています。しかし、今月初めに発表された決算が市場の期待を下回ったことで、同社の株価は52週ぶりの安値を記録しました。
今後、AMDの成長を左右する重要な要素として、次世代AIチップ「MI350」の市場投入やPC・サーバー市場におけるインテルとの差の拡大が挙げられます。また、エヌビディアとの競争が激化する中で、AMDがどこまで差を縮められるかが注目されます。
ベンチマークのアナリストによる強気の評価を受け、AMDの今後の動向には引き続き注目が集まります。市場の期待が高まる中、2025年は同社にとって重要な転換点となる可能性があります。
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