アーム・ホールディングス(ARM)の株価が2月14日の米国市場で一時急上昇しました。その後、株価は下落しましたが、この急上昇は、同社がこれまでのチップ設計ライセンス供与のビジネスモデルから一歩踏み出し、自社での半導体製造に乗り出すとの報道が影響しています。この新たな事業展開は、半導体市場において大きな変化をもたらす可能性があります。
半導体製造参入がもたらす影響
アームはこれまで、スマートフォン向けのチップ設計をライセンス供与するビジネスを中心に展開してきました。しかし、今後はハイエンドのクラウドサーバー向けプロセッサー市場での地位を高めることを狙っています。フィナンシャル・タイムズの報道によると、同社の最初のチップは、メタ・プラットフォームズ(META)を顧客とし、人工知能(AI)アプリケーションを実行するための大規模データセンター向けの中央処理装置(CPU)になる予定です。
他の半導体企業への影響
アームの半導体市場への本格的な参入は、競合企業に大きな影響を与える可能性があります。特に、ブロードコム(AVGO)やマーベル・テクノロジー(MRVL)といった企業は、テクノロジー企業向けに社内プロセッサーの設計を支援しており、アームの動きが彼らの価値を脅かすかもしれません。
また、クアルコム(QCOM)やエヌビディア(NVDA)などの大手顧客にとっても、アームが競争相手となる可能性がある点は無視できません。特に、クアルコムはスマートフォン向けのチップ市場でアームの技術を活用しているため、今後の関係性がどう変化するかが注目されます。
「チップレット」戦略の可能性
ジェフリーズのエクイティ・セールス・スペシャリストであるウィリアム・ビーヴィントン氏によると、アーム・ホールディングスはメタに完全なチップを提供するのではなく、「チップレット」と呼ばれるモジュール式の部品を供給する可能性が高いとのことです。この戦略が採用されれば、アームのビジネスモデルが大きく変化するわけではなく、チップ市場での競争を直接的に激化させるものにはならないと考えられます。
半導体市場での今後の展開
アームの大株主であるソフトバンクグループは、独自のチップ製造事業への野心を持っています。最近では、英国のAIチップ企業グラフコアを買収したほか、以前にはインテル(INTC)と協力し、エヌビディアに対抗するチップの製造を検討していたことも報じられました。
さらに、ブルームバーグの報道によると、ソフトバンクグループは現在、データセンター向けの半導体メーカーであるアンペール・コンピューティングの買収に近づいており、その買収額は約65億ドルにのぼる可能性があります。この買収が実現すれば、アームの半導体市場への移行が一気に加速するかもしれません。
まとめ
アーム・ホールディングスの半導体製造参入は、同社にとって大きな転機となるだけでなく、業界全体にも影響を与える可能性があります。メタ・プラットフォームズとの提携を通じて、データセンター向けチップ市場での競争力を高めることが期待されていますが、一方でブロードコムやマーベル・テクノロジーなどの企業にとっては新たな競争要因となり得ます。
また、ソフトバンクグループによるアンペール・コンピューティングの買収が実現すれば、アームのビジネスモデルの転換が一層加速する可能性があり、今後の動向が注目されます。