アメリカの半導体大手インテル(INTC)の株価が先週(2/10-14)急騰しました。週間で23.6%の上昇を記録し、これは2000年1月以来、約25年ぶりの大幅な上昇率となります。ブルームバーグのデータによると、週間のピーク時の上昇率は32%に達し、過去40年以上で最高の週となりました。
この急騰の背景には、TSMC(TSM)との提携の可能性が浮上したことが挙げられます。長年、半導体市場で苦戦していたインテルにとって、業績回復への期待が高まっています。
インテルとTSMCの提携報道が株価を押し上げる
2月14日、ブルームバーグ・ニュースはTSMCがインテルの工場への出資を検討していると報じました。この協議の背景には、アメリカ政府の要請があるとされ、半導体業界における米国内製造の強化を狙っていると見られています。
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TSMCとインテルの関係について、ロバート・W・ベアード&カンパニーのアナリストであるトリスタン・ジェラ氏は、「TSMCはインテルの3nm/2nm製造工場にエンジニアを派遣し、TSMCのノウハウを活用する可能性がある」と述べています。また、両社が共同で所有し、TSMCが運営する新たな事業体が設立される可能性も示唆されています。
これを受けて、市場では「インテルとTSMCの提携が実現すれば、半導体市場におけるインテルの競争力が大きく向上するのではないか」との見方が広がりました。
インテルの苦戦と業界における位置付け
インテルは長年にわたり半導体業界のリーダーとして君臨してきました。しかし、近年は業績の低迷が続いており、特に人工知能(AI)アクセラレータ・チップ分野ではエヌビディア(NVDA)に対抗できる製品を生み出せていません。
さらに、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)やTSMCにもシェアを奪われ、同社が掲げる製造業再建計画は思うように進んでいません。こうした状況下で、2024年12月にはパット・ゲルシンガー最高経営責任者(CEO)が解任されるなど、経営陣の交代も行われました。
インテルの最高財務責任者(CFO)は「会社解散の可能性は未解決の問題」と発言しており、一部では買収のターゲットになるのではないかとの見方もあります。しかし、アナリストたちは「インテルが丸ごと買収される可能性は低い」との見解を示しています。
インテルとTSMCの提携が持つ意味とは?
The Futurum Groupのダニエル・ニューマンCEOは「何らかの提携が実現すれば、インテルにとって非常に強気なシナリオとなる」としながらも、「まだ確定的なものではない」と指摘しています。
また、シティのアナリストであるクリストファー・ダネリー氏は「この種の取り決めが成功する可能性は低い」と慎重な見方を示しています。提携が実現した場合、インテルの製造力が飛躍的に向上する可能性がありますが、交渉が難航する可能性もあるため、市場は今後の動向を慎重に見極める必要があります。
米政府の半導体政策とインテルの今後
バイデン政権は、2022年に「チップ・科学法」を成立させ、米国内での半導体製造の強化を推進してきました。最近では、ホワイトハウスがこの法律に関連する助成金の再交渉を求めているとの報道もあります。
JDバンス副大統領は「米国で最も洗練されたAIハードウェアが製造されるようにする」と発言しており、アメリカ政府がインテルを含む国内半導体企業を支援する姿勢を明確にしています。
Gabelli Fundsのポートフォリオ・マネジャーであるヘンディ・スサント氏は、「AIチップを製造できる米国企業は限られており、国内ではインテルのみがその役割を担うことができる」と指摘しています。仮にインテルとTSMCが提携すれば、アメリカのAIチップ製造にとって大きな転機となる可能性があります。
まとめ:インテル株は今後どうなる?
インテルの株価は、TSMCとの提携報道を受けて25年ぶりの大幅上昇を記録しました。しかし、提携が正式に決定したわけではなく、交渉の行方によっては株価が再び変動する可能性があります。
また、インテルの業績が本格的に回復するには時間がかかると見られており、短期的な値動きだけで判断するのはリスクがあります。投資家としては、政府の半導体政策やインテルの戦略の進展を注意深く見守ることが重要です。
今後、TSMCとの提携が実現するかどうか、そしてインテルが半導体市場での競争力を取り戻せるのか、引き続き注目が集まります。