米国を代表する半導体企業であるインテル(INTC)が、TSMC(TSM)やブロードコム(AVGO)との間で買収を巡る協議を進めていることが、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によって報じられました。本記事では、その内容を詳しく紹介します。
ブロードコムがインテルのチップ設計・マーケティング事業を調査
WSJの報道によると、ブロードコムはインテルのチップ設計およびマーケティング事業を綿密に調査しているとのことです。ブロードコムは、インテルの製造事業のパートナーを見つけた場合に限り、入札の可能性を検討しているものの、現時点では正式な買収提案は行われていません。そのため、最終的に買収を見送る可能性もあると関係者は述べています。
TSMCがインテルの工場管理を検討
WSJは、TSMCがインテルの工場の一部またはすべてを管理する可能性を検討していることについても報じています。TSMCは、投資家コンソーシアムやその他の企業と連携する形で、インテルの製造部門を運営する選択肢を探っています。ただし、TSMCとブロードコムの間には協力関係はなく、それぞれ独立して交渉が進められているとのことです。
なお、TSMCがインテルの工場を管理する場合、米国政府の承認が必要となります。2022年に成立したCHIPS法に基づき、インテルは米国内での半導体製造に対し、最大79億ドルの助成金を受けています。そのため、外資が工場を管理することについて、米政府がどのような判断を下すのかが注目されています。
インテル分割の可能性と業界のトレンド
WSJの記事では、インテルの事業分割が進む可能性についても指摘されています。現在の半導体業界では、「設計」と「製造」を分離する流れが加速しており、インテルもこのトレンドに沿って製造部門を切り離す可能性があります。
インテルの臨時会長であるフランク・イヤー氏は、ホワイトハウスの関係者や買収を検討する企業との交渉を主導しており、「株主価値の最大化を最優先する」と述べているとのことです。
インテルの技術的な課題と競争力の低下
WSJは、インテルが近年競争力を失った主な要因についても言及しています。その中で、特に以下の点が強調されています。
- TSMCやサムスン電子に対する技術的な遅れ
- 人工知能(AI)分野での出遅れ
- エヌビディアのAIチップに対する需要の高まりによる影響
インテルは、かつて半導体業界のトップ企業でしたが、AI市場の急成長に伴い、ハイテク企業の支出が同社のプロセッサーからエヌビディアのAIチップへと移行したことで、市場での地位が低下しているとのことです。
インテルの工場分離と外部投資家の関与
WSJの記事では、インテルが工場部門の分離を進め、外部投資家を迎え入れる計画を立てていることについても触れられています。
2022年後半から、インテルは工場部門を独立した事業として運営する動きを加速させ、外部顧客からの注文を受ける体制を構築してきました。昨年には、工場部門の個別財務報告を開始し、将来的には独自の取締役会を持つ子会社化を目指しているとのことです。
インテルの暫定的な共同CEOであるデビッド・ジンスナー氏は、「新たな体制により、インテルは外部投資家を工場に迎え入れることができるようになる」と述べています。ただし、インテルの工場をTSMCの方法に適応させるには、大規模なエンジニアリングの再編が必要となるため、実現には多くの課題があるとも指摘されています。
インテル買収協議の影響と今後の展開
WSJの記事では、インテルが過去1年間で買収の関心を集めてきたことが強調されています。特に、前CEOのパット・ゲルシンガー氏が更迭された後、買収に関する動きが加速しているとのことです。
TSMCとの提携の可能性が報じられたことを受けて、インテルの株価は先週急騰しました。しかし、技術的な課題や米国政府の承認問題を考慮すると、今後の交渉は複雑なものになると見られています。
かつては業界をリードしていたインテルですが、今や競争の激化により、市場価値はライバル企業に劣る状況となっています。今後の買収協議がどのように進展し、インテルの事業がどのように変革されるのか、引き続き注目が集まります。
まとめ
今回、ウォール・ストリート・ジャーナルが報じたインテルの買収協議について紹介しました。
- ブロードコムはインテルのチップ設計・マーケティング事業を調査中
- TSMCはインテルの工場の管理を検討しており、米政府の承認が必要
- インテルの分割は業界のトレンドに沿った動き
- 競争力の低下や技術的課題がインテルの成長を阻害
- 外部投資家の関与が進み、工場部門の子会社化を検討
- 買収協議の進展次第で、インテルの将来が大きく変わる可能性
インテルの今後の動向は、半導体業界全体に大きな影響を与えるため、引き続き最新情報を注視していきたいところです。