エヌビディア(NVDA)が次世代のグラフィックス・プロセッシング・ユニット(GPU)「ブラックウェル」シリーズを発表し、大きな成長のチャンスを迎えています。しかし、米国みずほ証券のアナリストであるビジェイ・ラケシュ氏は、この新製品の導入に伴い、一時的な「成長痛」に直面する可能性があると指摘しています。
1月期の業績は堅調、4月期には慎重な見方
ラケシュ氏は、エヌビディアの2025年1月期の業績について、データセンター事業が大きく貢献し、力強い結果を残すと予想しています。一方で、4月期については「より平坦な」成長が見込まれると述べています。
市場調査会社ファクトセットによると、1月期の売上高は334億ドル、4月期は374億ドルとのアナリストのコンセンサス予想が示されています。しかし、ラケシュ氏の予測では、4月期の売上高はやや低めの367億ドルとなる見通しです。
この背景には、新しいGB200を搭載したエヌビディアのGPUサーバーが、より複雑なコネクティビティや電源のアップグレードを必要とすることが影響していると考えられています。こうした技術的な課題が、短期的な業績に影響を及ぼす可能性があるそうです。
中国市場の動向と規制リスクにも注意
エヌビディアにとって、もう一つの懸念材料は中国市場に対する規制強化です。米中関係の緊張が続く中、エヌビディアの中国向けビジネスは規制の影響を受ける可能性があり、成長の足かせとなる可能性があります。特に、高性能GPUの輸出規制が厳格化されることで、中国市場での売上に影響が出ることが懸念されています。
投資家は、エヌビディアが2月26日に発表する1月期の決算を通じて、これらのリスクに関する詳細な情報を得ることになりそうです。
2025年後半にかけて業績は改善へ
ラケシュ氏は、エヌビディアの短期的な課題を指摘しつつも、2025年後半にかけて業績が改善すると予想しています。これは、大手クラウド事業者による設備投資の増加が背景にあります。
マイクロソフト(MSFT)、アマゾン・ドット・コム(AMZN)、アルファベット(GOOGL)といった大手企業がデータセンターへの投資を拡大しており、オラクル(ORCL)やアップル(AAPL)、オープンAIなどもエヌビディアの製品を活用する動きを強めています。
エヌビディアは、強力な顧客関係を構築し、統合型ハードウェアプラットフォームを提供することで、業界をリードし続けるとみられています。また、CUDAを中心としたソフトウェアエコシステムの強みを活かし、AI関連市場での優位性を確保する戦略を進めています。
こうした成長見通しを踏まえ、ラケシュ氏はエヌビディア株を「アウトパフォーム」と評価し、目標株価を175ドルに設定しています。
モルガン・スタンレーの見解:エヌビディアの市場支配は続くのか?
一方、モルガン・スタンレーのアナリストであるジョセフ・ムーア氏は、エヌビディアの競争環境について分析しています。ムーア氏によると、ブロードコム(AVGO)やマーベル・テクノロジー(MRVL)などがAIチップ市場で存在感を強めており、エヌビディアにとっての脅威となり得ると指摘しています。
特に、アルファベットはブロードコムと共同でカスタムチップの開発を進めており、エヌビディアへの依存度を下げる可能性があります。しかし、ムーア氏は「エヌビディアが支配的な市場シェアを維持することを前提とすべき」と述べ、同社の強みが依然として大きいことを強調しています。
また、アルファベットは2025年にエヌビディア製品の購入額を前年の約2倍に増やす見込みであり、同社のAIチップ「TPU」の成長は小幅にとどまると予想されています。これにより、エヌビディアはAI市場での主導権を引き続き握ると考えられています。
まとめ:短期的な課題を乗り越え、長期的な成長を期待
エヌビディアは、新GPU「ブラックウェル」の導入に伴い、一時的な技術的課題や中国市場の規制リスクに直面する可能性があります。しかし、クラウド事業者による設備投資の増加や、CUDAエコシステムの強みを活かした成長戦略により、2025年後半には業績が改善するとみられています。
また、ブロードコムやマーベル・テクノロジーといった競争相手が台頭する中でも、エヌビディアは市場での優位性を維持し続けると予測されています。
今後の焦点は、2月26日の決算発表でどのような見通しが示されるかです。短期的な調整局面があるとしても、エヌビディアの長期的な成長ポテンシャルに注目が集まっています。
*過去記事はこちら エヌビディアNVDA