テレヘルス企業であるヒムズ&ハーズ・ヘルス(HIMS)の株価が2月13日の米国市場で取引で28%近く急騰しました。この急騰は、同社が放映したスーパーボウル広告の影響を受けたものとみられています。この広告では、アメリカの医療制度を批判すると同時に、患者が手頃な価格で減量できる選択肢を提供することを強調しました。
「効く薬はあるが、患者ではなく利益のために価格が決められている」というメッセージが込められたこの広告に対し、企業や議会の指導者からさまざまな反応がありました。特に、安全性の懸念や副作用に関する情報が含まれていない点について、批判的な意見が出ています。
ヒムズ&ハーズの株価は年初来で100%上昇
ヒムズ&ハーズの株価は年初来で145%上昇し、13日現在の株価は59.18ドルとなっています。市場では、この急騰の背景には、ロバート・F・ケネディ・ジュニア氏が米国保健福祉省(HHS)の新長官に承認されたことも影響していると考えられています。
米国みずほ証券のヘルスケア専門家であるジャレド・ホルツ氏は、「ロバート・F・ケネディ・ジュニア率いるHHSは、医薬品の安全性が確認されれば、GLP-1関連の製薬企業に対して比較的寛大な姿勢を取る可能性が高い」と分析しています。新政権は、製薬業界の中でも特に予防医療に関連するコストと利益のバランスを重視しているようです。
GLP-1不足と市場の動向
現在、市場をリードするイーライ・リリー(LLY)とノボ・ノルディスク(NVO)の2社が、GLP-1製剤の需要増に対応するため、数十億ドル規模の増産を進めています。しかし、それでも供給不足が懸念されています。GLP-1製剤が正式に供給不足と認定された場合、調剤薬局は特許製品の代替品を製造し、より低価格で提供することが可能になります。
この状況の中で、消費者はヒムズ&ハーズやロ(Ro)社(別の遠隔医療プラットフォーム)を利用し、減量治療を継続しています。特に、イーライ・リリーはロ社と提携し、利便性の高い注射薬ではなく、バイアル薬(小瓶に入った薬剤)を提供することで、供給の制約を緩和しようとしています。
FDAの動向とGLP-1の供給状況
アメリカ食品医薬品局(FDA)は、イーライ・リリーのチルゼパチド製剤である糖尿病治療薬「モンジャロ」と体重減少治療薬「ゼップバウンド」を正式に供給不足リストから外しました。しかし、同社が現在の需要に完全に対応できるかどうかについては依然として不安が残っています。
「イーライ・リリーとノボ・ノルディスクは供給面で一定の進展があり、製造努力も強化されていると発表している。ただし、米国の大多数の人々が先発医薬品を利用するのか、それとも調剤薬局の代替製品を選ぶのかは依然として不透明な状況だ」とホルツ氏は述べています。
一方で、ノボ・ノルディスクのセマグルチド製剤である糖尿病治療薬「オゼンピック」と体重減少治療薬「ウェゴビー」は、引き続きFDAの供給不足リストに掲載されています。しかし、同社は生産量の増加を理由にリストからの削除を申請しています。
このような状況の中で、ヒムズ&ハーズやロ社のような遠隔医療プロバイダーは、供給不足のリスクがあるにもかかわらず、調剤薬局の配合製品を提供し続けています。今後の市場の動向に注目が集まっています。
まとめ
ヒムズ&ハーズの急騰は、スーパーボウル広告の影響に加え、GLP-1市場の需給バランスや新政権の医療政策が大きく影響していると考えられます。GLP-1製剤の供給不足が今後どのように解消されるか、また遠隔医療企業がどのように市場シェアを拡大していくかは、引き続き注目すべきポイントです。