AIを活用した融資プラットフォームを運営するアップスタート・ホールディングス(UPST)は、ここ1年で急成長を遂げています。2022年末には、パンデミック時の最高値から95%以上下落したものの、株価は急回復し、過去1年間の上昇率は227%に達しています。
この上昇は、単なる市場の期待によるものではなく、アップスタートのビジネスの成長によって正当化されています。しかし、高金利環境が続く中、貸付市場は依然として低迷しており、同社の株価は過去最高値の4分の1以下にとどまっています。今後、さらなる成長は期待できるのでしょうか?2025年の展望について詳しく見ていきます。
アップスタートの株価が急上昇した理由
アップスタートがこれほどまでに好調な理由は、厳しい融資環境下でも市場予想を上回る売上を記録し、外部投資家の融資需要が増加しているためです。同社のAIを活用した融資審査モデルは、従来の審査方法よりも低いデフォルト率を維持しながら、貸し出し件数を増やしています。
特に、第3四半期には売上・利益ともに市場予想を超え、2022年以来初めて、外部投資家の融資需要が大幅に増加しました。そして、直近の第4四半期の業績はさらに素晴らしいものでした。
アップスタートの最新業績
アップスタートの第4四半期決算では、以下のような力強い成長が見られました。
- 売上は前年比56%増、前四半期比35%増
これは、アナリストの予想を大きく上回る結果となりました。 - 融資件数が68%増加し、融資実行率も上昇
融資実行率(融資を受けた申請者の割合)は、前年同期の11.6%から19.3%に増加しました。 - 収益性の大幅改善
280万ドルの純損失を計上しましたが、2023年第4四半期の4240万ドルの損失と比較すると、大幅に改善しました。さらに、調整後純利益率は約14%となり、収益性の向上が確認されました。 - 2025年の業績見通しも市場予想を上回る
アップスタートは、2025年の売上を約10億ドル、調整後EBITDAマージンを18%、GAAP基準の純利益では「少なくとも損益分岐点」に達すると見込んでいます。
2025年にアップスタートがさらに成長する要因
現在の好調な業績に加え、アップスタートにはさらなる成長の余地があります。現在、同社は個人向けローンを中心に事業を展開していますが、自動車ローンや住宅担保貸付(HELOC)といった新しい分野にも進出しています。
- 自動車ローン市場と住宅担保貸付の成長
第4四半期には、自動車ローンで4300万ドル、HELOCで2700万ドルのローンを組成しました。これは総融資額の約3%強ですが、前四半期比で自動車ローンは61%増、HELOCは59%増と大幅に成長しています。 - 巨大市場への参入
- 自動車ローン市場の規模は約6,770億ドル
これは、個人向けローン市場の4倍以上の規模です。 - 住宅担保貸付市場の可能性
セントルイス連邦準備銀行によると、米国の住宅所有者は約35兆ドルの住宅資産を保有しており、HELOC市場には大きなポテンシャルがあります。
- 自動車ローン市場の規模は約6,770億ドル
今後、これらの分野で規模を拡大すれば、融資総額は数倍に成長する可能性があります。特に、金利がさらに低下すれば、すべての融資タイプで借り入れ需要が大幅に増加すると予想されます。
アップスタートの株価は今後どうなるのか?
アップスタートの事業拡大には一定のリスクが伴います。たとえば、以下の要素が今後の株価に影響を与える可能性があります。
- 金利の動向
もし米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げを行えば、融資需要は急増するでしょう。しかし、逆に金利が予想以上に長期間高止まりすれば、貸付環境は厳しくなります。 - 成長戦略の実行リスク
自動車ローンやHELOC市場における拡大戦略が計画通り進めば、アップスタートの事業は大きく成長するでしょう。しかし、競争が激しい市場であるため、スムーズに拡大できるかどうかが重要です。 - 現在のバリュエーション
アップスタートの株価は、12か月間の売上の約11.5倍という評価額になっています。この評価額は決して割安とはいえません。そのため、投資家は今後の業績成長が継続するかどうかを慎重に見極める必要があります。
まとめ
アップスタートは、AIを活用した革新的な融資プラットフォームを展開し、急成長を遂げています。2025年に向けて、金利の動向や新しい融資分野での拡大が、さらなる株価上昇の鍵を握っています。
ただし、同社の成長には一定のリスクがあるため、投資家は市場環境の変化を注意深く見守る必要があります。短期的にはボラティリティが高くなる可能性があるものの、長期的な成長ポテンシャルは依然として高いと言えます。
*過去記事はこちら アップスタート UPST