台湾の半導体大手、TSMC(TSM)は2月10日、2025年第1四半期の売上が予想レンジの下限になると発表しました。その背景には、1月に発生した複数の地震が生産に影響を与えたことが挙げられます。
TSMCによると、地震による損失額は保険金控除後で約53億台湾ドル(1億6,100万ドル)にのぼる見込みです。同社は、「失われた生産を回復するためにあらゆる努力をしている」と述べています。
第1四半期の売上ガイダンスと利益率見通し
TSMCは第1四半期の売上について、事前に示した250億ドル〜258億ドルのガイダンスを維持しています。ただし、実際の売上はこのレンジの下限付近になる可能性が高いとしています。
一方で、売上総利益率は57%〜59%に達する見通しを維持し、通期の業績見通しにも変更はないとしています。
1月の売上は36%増、ハイテク需要の高まりが追い風
2025年1月の売上は前年同月比36%増の2,933億台湾ドルとなりました。また、2024年10月から12月の売上は前年同期比38.8%増と高い成長を示しています。
市場のアナリストは、2025年第1四半期(1月~3月)の売上が前年同期比41%増になると予測しています。ただし、台湾企業の年初数ヶ月の売上を評価する際には注意が必要です。1月または2月のどちらかに旧正月休暇が含まれるため、月ごとの売上の変動が大きくなることがあるためです。
AI投資が加速、ハイテク大手の動向がTSMCに影響
マイクロソフト(MSFT)、アルファベット(GOOGL)、メタ・プラットフォームズ(META)などの米国の大手ハイテク企業は、2025年も引き続きAI分野への巨額投資を計画しています。アマゾン・ドット・コム(AMZN)も、AI関連の投資額を1,000億ドル規模に拡大する方針を示しています。
こうしたAI市場の成長はTSMCの業績にとって追い風となっています。同社は、AI向け半導体の需要増加を背景に、2025年の設備投資が過去最高の420億ドルに達する可能性があると発表しました。
また、中国の新興企業ディープシーク(DeepSeek)が低価格なAIモデルを発表し市場に影響を与えたものの、TSMCの主要装置サプライヤーであるASMLホールディング(ASML)は、半導体業界全体の楽観的な見方を強調しています。
米国での工場運営と関税リスク
TSMCの今後の見通しには、ドナルド・トランプ大統領が半導体輸入に関税をかける可能性を示唆していることが影響を与えています。台湾の経済相であるJ.W.クオ氏によると、TSMCの取締役会は今週、アリゾナ州で開催される予定です。同社は米国のアリゾナ州で最先端の半導体工場を運営しており、米国市場の動向が事業に与える影響は無視できません。
まとめ
TSMCは地震の影響を受けたものの、AI需要の高まりによって売上の成長を維持する見込みです。特に、ハイテク企業の巨額投資によって半導体需要は引き続き堅調に推移する可能性があります。一方で、米国の貿易政策や地政学的リスクにも注意が必要となります。今後、TSMCの米国工場の動向や設備投資の進捗に注目が集まります。
*過去記事はこちら TSMC