エヌビディア(NVDA)の株価はここ数週間、下落傾向が続いています。その背景には、人工知能(AI)ソフトウェア「ディープシーク」がもたらす影響が指摘されています。ディープシークの技術革新により、AIモデルの訓練コストが従来考えられていたよりも安価になる可能性があるとされ、今後エヌビディアのグラフィック処理ユニット(GPU)の需要が減少するのではないかとの懸念が市場で広がっています。
しかし、エバコアISIのアナリストであるマーク・リパシス氏は、この懸念を一蹴し、エヌビディアの売上見通しに対して強気の見解を示しています。
AI市場の変化とエヌビディアの優位性
リパシス氏は、大手ハイパースケールクラウドプロバイダーの「上級AIエンジニア」との対話を通じて、エヌビディアが引き続き業界で圧倒的なポジションを維持していると確信を持っていると述べました。
同氏によると、エヌビディアのソフトウェアエコシステムの堅牢性と開発コミュニティの広がりは市場で他に類を見ないものであり、競争相手よりも5年から10年先を行っていると指摘しています。さらに、ディープシークの登場は大規模言語モデル(LLM)の進化の速さを示しており、エヌビディアが持つ「柔軟でプログラミング可能なプラットフォーム」が今後の成長に有利に働くと考えられています。
エヌビディア製AIチップの需要は依然として堅調
エヌビディアの新型チップ「Blackwell」の立ち上がりの遅れに対する懸念も、一部の投資家の間で株価の下落要因となっています。しかし、リパシス氏は「エヌビディアの製品に対する需要は依然として供給を上回っている」と指摘しています。
特に、同社の既存製品「Hopper(H100)」の需要は堅調であり、「Blackwell(B100)」が手に入らない場合でも、H100が代替品として購入される可能性が高いと述べています。そのため、短期的な供給の問題があっても、エヌビディアの売上には大きな影響を与えないと考えられます。
2025年のエヌビディアの業績見通し
エヌビディアの株価は2024年末から2025年初頭にかけて9%下落しましたが、PHLX半導体指数(SOX)も同期間に4%下落しています。こうした市場全体の動向を考慮すると、エヌビディアの株価の下落はAI市場の変化だけが原因ではないことがわかります。
リパシス氏は、2月26日に予定されているエヌビディアの決算報告に先立ち、「戦術的アウトパフォーム」として買い推奨の判断を示しました。同氏は、決算発表時にポジティブな売上報告と将来の見通しが示される可能性が高いと予想しています。
「最大のリスクは、Blackwellの延期が短期間の供給不足を引き起こす可能性があること」とリパシス氏は述べていますが、それでもエヌビディアの全体的な成長戦略には影響が少ないとみられています。
投資家にとってのエヌビディアの魅力
エヌビディアは、AI市場の発展とともに重要な役割を果たし続けています。特に、学習と推論の両方を効率的に処理できるチップを提供することで、今後のAI開発の中心的な存在となる可能性が高いと考えられます。
最近の株価の下落や新型チップの遅延といった懸念材料はあるものの、エヌビディアのソフトウェア・エコシステムの強さとハードウェアの競争力は依然として健在です。投資家にとって、短期的な市場の動きに惑わされるのではなく、長期的な視点でエヌビディアの成長を見極めることが重要です。
*過去記事はこちら エヌビディアNVDA