最近、中国の新興企業ディープシークが発表したAIモデルに対する市場の興奮が、株式市場の乱高下を引き起こしています。この動きがエヌビディア(NVDA)をはじめとする人工知能(AI)関連企業にどのような影響を与えるのか、投資家の間で大きな関心が集まっています。ニューストリートのアナリストであるピエール・フェラーグ氏は、ディープシークの登場がAIセクター全体にとってポジティブな出来事であると指摘しています。
ディープシークのAIモデルは「オン・ザ・カーブ」
フェラーグ氏は、ディープシークのAIモデルについて「オン・ザ・カーブ」であると評価しています。「オン・ザ・カーブ(On the Curve)」とは、技術や市場の発展において、現時点での最先端の進化を反映している状態を指します。これは、最新の業界トレンドに沿った進化を遂げているものの、既存の成長予測を超えるような劇的なブレークスルーではないことを意味します。
ディープシークのモデルは、クラス最高の最適化が可能であり、業界の最新イノベーションを活用していますが、それはAI技術の進化の流れの中にある自然な発展であるというのがフェラーグ氏の見解です。したがって、市場の一部で囁かれる「AI市場の劇的な変化」や「ディープシークがすべてを変える」という極端なシナリオは現実的ではないとしています。
また、AIコンピューティングのコスト削減という点では、ディープシークのモデルは、オープンAIが過去に行ってきた改良の歴史と類似しています。しかし、さらなる技術革新が求められる段階であるとも指摘しています。
AIコンピューティングのコスト削減が市場に与える影響
AIコンピューティングのコストが低下すれば、業界全体の支出増加につながり、AI導入の加速が期待されます。これは、半導体業界においてトランジスタのコストが低下したことで、新たな技術革新やアプリケーションが生まれ、市場の需要を牽引した過去の流れと同様の傾向を示すと考えられます。
特に、今後のAI市場では以下の2つの分野において演算能力の需要が高まると予測されています。
- マルチモーダルAIモデル
テキストだけでなく、画像・動画・音声を処理できるモデルが求められており、大量のデータ処理能力が必要になります。 - 推論モデルの強化
AIが質の高い回答を導き出すために、より多くの仮説を検討する高度な推論プロセスが必要とされるため、コンピューティング能力の向上が不可欠となります。
主要テック企業のAIインフラ投資が増加
ここ2週間の間に、大手テクノロジー企業は2025年のAIインフラに対する設備投資計画を大幅に引き上げています。最近の決算発表において、以下の企業が設備投資額の増額を発表しました。
- マイクロソフト(MSFT)
- アルファベット(GOOGL)
- メタ・プラットフォームズ(META)
- アマゾン(AMZN)
これらの企業は、2025年の設備投資額を総額3,350億ドルに増額する方針を示しています。フェラーグ氏は、これがAIのさらなるイノベーションを促進し、ディープシークの発表がAIインフラ投資の減少を引き起こすとの懸念は事実ではないと述べています。むしろ、大手企業はディープシークの技術的進歩を理解し、AI導入を加速させていると分析しています。
ディープシークの技術がAI需要を減少させる懸念は不要
一部の市場関係者は、ディープシークの技術がAIの計算コストを大幅に削減することで、AI向けのハードウェア需要が減少するのではないかと懸念していました。しかし、フェラーグ氏の分析によれば、そのようなシナリオは現実的ではなく、むしろAIの発展が加速することが期待されます。
今後、マルチモーダルAIや高度な推論モデルが普及することで、AI向けのチップやデータセンターの需要は引き続き拡大していくと考えられます。ディープシークの発表はAI技術の進化を示す重要な出来事ではあるものの、市場全体の成長を阻害するものではなく、むしろさらなる発展を後押しする要因となりそうです。
まとめ
ディープシークの最新AIモデルは、業界の進化を象徴するものであり、AIコンピューティングのコスト削減を通じて市場の成長を促進すると考えられています。また、大手テクノロジー企業の設備投資計画の拡大は、AIインフラ投資が引き続き拡大していることを示しており、AI市場の活況が継続することを裏付けています。