米国の投資情報誌バロンズ（Barron’s）によると、ドナルド・トランプ大統領の政策は再生可能エネルギー業界に一時的な逆風をもたらしていますが、それが必ずしも投資家にとって悪材料となるわけではありません。本記事では、バロンズの「3 Renewable-Energy Stocks That Could Thrive Under Trump」という記事をもとに、再生可能エネルギー関連株の現状と今後の成長可能性について紹介します。
トランプ大統領の政策が再生可能エネルギー業界に与えた影響
バロンズによると、トランプ大統領は就任直後に「エネルギー緊急事態」に関する行政命令を発表しました。この命令により、化石燃料産業への支援が強化される一方で、再生可能エネルギー分野の支援は排除されました。
また、連邦政府の許可を90日間保留し、バイデン政権時に承認された融資や助成金を一時停止することで、いくつかの再生可能エネルギープロジェクトが中断されました。一部の企業はこの影響で撤退を決定したものの、裁判所の判断によりこの命令は当面発効しないこととなっています。しかし、将来的に支出の一時停止が再開される可能性も指摘されています。
投資家はなおも再生可能エネルギー市場に注目
バロンズの記事では、再生可能エネルギー市場は長期的な成長が期待できると指摘されています。特に、企業の経営者や投資家はこの業界の将来性を楽観視しており、実際にいくつかのポジティブな動きも報告されています。
例えば、フランスのエネルギー大手トタルエナジーズ（TTE）は、クリーンエネルギーへの投資戦略を慎重に見直しながらも、依然として米国市場の魅力を評価し、投資を継続すると発表しました。
また、投資会社エスプラネード・キャピタルのショーン・クラベッツCEOは、「この一時的な停滞は乗り越えられる」と述べ、投資家に冷静な対応を促しています。
再生可能エネルギー関連企業の現状と展望
バロンズの記事では、具体的な企業の動向についても触れられています。
エナフェーズ・エナジー（ENPH）
エナフェーズ・エナジーは家庭用ソーラーパネルの制御技術を開発している企業です。同社はアナリスト予想を上回る売上を記録し、米国市場で6%の成長を達成しました。
CEOのバドリ・コタンダラマン氏は、トランプ政権が太陽光発電支援を完全に廃止するとは考えておらず、同社の米国内生産の拡大計画に影響はないとの見解を示しています。
風力発電の展望
風力発電については、トランプ大統領の政策が逆風となっており、特に洋上風力発電は厳しい状況に置かれています。例えば、シェル（SHEL）は東海岸の主要風力発電プロジェクトから撤退し、ニュージャージー州は風力発電の入札を取り消しました。
しかし、バロンズによると陸上風力発電の設置は2025年に31%増加する見込みであり、特に連邦政府の許可をあまり必要としないプロジェクトは成長を続ける可能性があるとのことです。
ヴェスタス・ウィンド・システムズ（VWS.CO）
世界最大の風力タービンメーカーであるデンマークのヴェスタス・ウィンド・システムズは、2024年の受注残が過去最高を記録したと発表しました。
同社の株価は2024年に54%下落しましたが、2025年には2024年比で39%多くの風力発電設備を供給すると予測されており、シティグループのアナリストは今後の回復を期待しています。
ファースト・ソーラー（FSLR）
米国最大のソーラーパネルメーカーであるファースト・ソーラーは、トランプ氏の当選後に株価が22%下落しました。しかし、現在の株価は2025年の予想利益のわずか8倍で取引されており、割安感があると指摘されています。
ジェフリーズのアナリスト、ジュリアン・デュモリン＝スミス氏は、ファースト・ソーラーを「米国における信頼できる国内モジュールサプライヤー」と評価し、株価は現在の167ドルから248ドルまで上昇する可能性があると予測しています。
再生可能エネルギー分野の投資機会は依然として魅力的
バロンズの記事を総合すると、トランプ大統領の政策は短期的には再生可能エネルギー業界に影響を与える可能性がありますが、長期的な成長トレンドは変わらないという見方が強いようです。
特に、陸上風力発電の成長、太陽光発電企業の堅調な業績、投資家の前向きな姿勢を考えると、再生可能エネルギー分野は今後も投資対象として魅力的であると考えられます。
政策リスクを考慮しながらも、長期的な視点で再生可能エネルギー関連株に投資する価値があるというのが、今回のバロンズの記事の主なメッセージです。再生可能エネルギーに関心のある投資家は、今後の市場動向を注視しながら、慎重に投資戦略を検討していく必要があります。