半導体業界で注目を集めるエヌビディア(NVDA)とアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)の競争について、ブルームバーグが詳細な分析を行った記事「AMD’s Stock Slump Shows There’s No Silver Medal in AI」を発表しました。本記事では、ブルームバーグの内容を要約しながら、AMDの現在の課題と今後の可能性について解説します。
AMDの株価下落と市場の動向
ブルームバーグによると、AMDの株価は2023年11月以来の安値水準に沈み、2023年末から25%以上の下落となっています。一方、フィラデルフィア証券取引所半導体指数は20%以上上昇し、エヌビディアの株価は160%急騰しているとのことです。
この背景には、AIチップ市場での競争が影響しているとみられています。特に、AMDはエヌビディアと比べてAIアクセラレーター市場での成長が鈍化しており、投資家の期待に応えられていない状況が指摘されています。
AIアクセラレーター市場での苦戦
AMDのリサ・スーCEOは、2025年前半のAIアクセラレーター・チップの売上が2024年下半期とほぼ同じ水準になるとの見通しを示しました。これにより、投資家の間で失望感が広がり、株価下落の一因となりました。
さらに、シティグループはAMDの決算を受け、AI市場の成長鈍化や利益率の低下を理由に評価を引き下げました。エヌビディアと比較すると、AMDがAI市場で競争することの難しさが浮き彫りになっています。
エヌビディアの圧倒的な市場シェアとAMDの課題
ブルームバーグによれば、2024年の世界サーバー向けGPU市場の約89%をエヌビディアが占めると予測されています。一方、AMDの市場シェアは10.3%、インテルは1.1%にとどまるとのことです。
また、中国のAIスタートアップ企業ディープシークが、低コストかつ少ないチップで高い性能を発揮する技術を発表したことで、AIインフラ市場における競争がさらに激化しています。これにより、AMDの成長見通しに対する懸念が強まっていると分析されています。
AI市場への巨額投資とAMDの可能性
一方で、AI市場への投資は引き続き拡大しています。ブルームバーグの記事では、アルファベットが2025年の設備投資額を約750億ドルと見込んでいることや、アマゾン・ドット・コムも大規模な設備投資を発表したことが紹介されています。
このような状況の中、オールスプリング・グローバル・インベストメンツのポートフォリオ・マネージャーであるマット・ウィトマー氏は、エヌビディアやブロードコムだけでAIインフラを支えることはできないと指摘。AMDが15%の市場シェアを獲得できれば、大きな売上につながる可能性があると述べています。
株価の下落と今後の展望
決算発表後、AMDの株価は大きく下落しましたが、アナリストの平均目標株価と比較すると約35%割安な状態となっています。ブルームバーグの記事では、フィラデルフィア証券取引所半導体指数の構成銘柄の中でも、AMDが最も高いリターンを期待できる銘柄の一つであることが指摘されています。
さらに、2025年のAMDの売上は約24%成長し、純利益は3倍以上になる見込みとのことです。2026年には成長が鈍化すると見込まれていますが、それでも売上は21%増、純利益は46%増と堅調な成長が予想されています。
ベアードのテッド・モートンソン氏は、決算後の株価下落は過剰反応の可能性があると指摘しており、現在のAMD株は投資家にとって魅力的な水準にあると考えられています。
まとめ
ブルームバーグの記事では、エヌビディアがAIチップ市場を圧倒する中で、AMDの成長が厳しい状況にあることが詳しく解説されています。しかしながら、AI市場全体の投資が拡大していることや、AMDの長期的な成長見通しがあることから、株価の下落は過剰な反応との見方もあります。
今後、AMDが新型チップの発表などで市場シェアを拡大できるかが、注目されるポイントとなりそうです。
*過去記事はこちら AMD