米国の大手テクノロジー企業が、AIデータセンターへの設備投資を加速させています。アマゾン・ドット・コム(AMZN)は2月6日、2025年も引き続き巨額の資本支出を行う方針を示しました。これは、エヌビディア(NVDA)をはじめとする半導体メーカーにとっても好材料となります。
AIデータセンターへの投資総額3200億ドル
アマゾンは、第4四半期の決算説明会で、同四半期に263億ドルの資本支出を行ったと発表しました。そして、2025年もこのペース(年間ベースで1052億ドル)を維持する方針を明らかにしました。アンディ・ジャシー最高経営責任者(CEO)は、この投資の大部分がクラウド事業であるアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)のAIインフラに充てられると述べました。
この発表により、アマゾン、マイクロソフト(MSFT)、メタ・プラットフォームズ(META)、アルファベット(GOOGL)の4社が2025年にAIデータセンターへ投じる総額は約3200億ドルに達します。具体的には、アマゾンの1000億ドルに加え、マイクロソフトが800億ドル、メタ・プラットフォームズが600億~650億ドル、アルファベットが750億ドルを投じる計画です。
クラウド市場の伸び悩みもAI投資は拡大
アマゾン、マイクロソフト、アルファベットの3社はいずれも、決算説明会でクラウドコンピューティングの需要が急増しているにもかかわらず、十分な供給能力を確保できていないと述べました。この影響で、クラウドサービス事業の売上はアナリストの予想を下回り、株価が低迷する局面がありました。
アマゾンは、クラウド市場の成長が今後数年間は「不安定」になると警告する一方で、AI関連の設備投資には強い期待を寄せています。「AIは、クラウド以来の大きなチャンスであり、インターネット以来の最大の技術革新の機会である」とジャシーCEOは強調しました。
AIチップ市場の最大の恩恵を受けるのはエヌビディア
こうしたAI関連投資の最大の恩恵を受けるのは、エヌビディアと考えられます。エヌビディアの株価は、中国のAI企業ディープシーク(DeepSeek)が旧型の低価格GPUを使用してAIモデルを訓練したことが明らかになり、一時6000億ドル規模の時価総額が減少しました。しかし、その後一部回復し、依然として市場の注目を集めています。
投資家は、エヌビディアが最先端のAIチップ「Blackwell」ファミリーを順調に販売できるか、またはクラウド企業がコストを抑えながらAIモデルを運用する新たな手法を見出すのかを注視しています。アマゾンも決算説明会で「業界全体がコンピューティングコストを削減する方法を模索している」と述べており、AI推論のコスト削減が進む可能性があると示唆しました。
他の半導体メーカーやハードウェア企業への影響
AIデータセンター投資の拡大は、エヌビディアだけでなく、他の半導体メーカーにもプラスの影響を与えます。ブロードコム(AVGO)やマーベル・テクノロジー(MRVL)も、AI向けチップの需要増加の恩恵を受けると見られています。また、アマゾンと共同で「Trainium」チップを開発しているアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)も重要なプレイヤーの一つです。
ただし、AMDは今週、AIチップ「MI300」シリーズの個別売上予測を中止したことから、一部のアナリストの間で懸念が広がりました。一方、ハードウェア分野では、デル・テクノロジーズ(DELL)、スーパー・マイクロ・コンピュータ(SMCI)、ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)などもデータセンター向けサーバーの需要増加から恩恵を受けると見られます。
経済環境の変化が投資計画に影響を与える可能性
もちろん、これらの巨大企業は、関税、金利動向、ドル高といったマクロ経済要因の影響を受ける可能性があります。そのため、投資計画が変更される可能性は否定できません。しかし、直近の決算発表を総合すると、AI関連の設備投資が活発に進められていることが明らかになっています。半導体市場にとって、この動きは引き続き大きな追い風となりそうです。