クアルコム(QCOM)は2月5日、2025年第1四半期の決算を発表し、堅調な業績を示しました。売上高は前年同期比18%増の116億7,000万ドルとなり、ウォール街の予想を大きく上回りました。しかし、時間外取引で株価は当初上昇したものの、その後下落しました。
第1四半期の業績概要
ファクトセットのデータによると、1株当たり利益(EPS)は24%増の3.41ドルとなり、市場予想の2.96ドルを上回りました。売上高は116億7,000万ドルで、予想されていた109億1,000万ドルを大幅に上回りました。
この成長の主な要因は、クアルコムのチップ部門における旺盛な需要の増加です。チップ部門の売上高は前年同期比20%増の101億ドルに達し、予想の93億ドルを上回りました。特に、スマートフォン向けチップの売上高は、予想の70億ドルを超え、前年同期比13%増の76億ドルとなりました。これで3四半期連続の成長となります。
多角化戦略と高成長セグメント
クアルコムのチップ売上の75%は依然として携帯電話向けですが、同社は事業の多角化に注力しています。クリスチアーノ・アモンCEOは決算発表の中で、2029年度までにハンドセット以外の売上を220億ドルにする目標を掲げており、今後も多角化戦略を推進していくと述べました。
- 自動車チップ部門:売上高は予想の8億9,000万ドルを上回り、前年同期比61%増の9億6,100万ドルに達しました。
- IoT(モノのインターネット):PCチップのリリース以降、勢いを維持しており、売上高はアナリスト予想の14億ドルを超え、36%増の15億5,000万ドルとなりました。
- 知的財産のライセンス収入:15億4,000万ドルで、市場予想の15億6,000万ドルをわずかに下回りました。
第2四半期の見通し
クアルコムは2025年第2四半期の売上見通しを103億ドル〜112億ドルと発表し、前年同期比15%の成長を見込んでいます。EPSの予想は中間点で2.80ドルとなり、市場予想の2.69ドルを上回る見込みです。
それにもかかわらず、決算発表後の時間外取引で株価は4%以上下落して取引されています。
スマートフォン市場の課題とクアルコムの対応策
クアルコムの売上の大部分を占めるスマートフォン市場は成熟しており、買い替えサイクルの延長が続いています。世界の消費者は、スマートフォンの買い替え周期を従来の3年から4〜5年へと延ばしており、2025年度の世界販売台数は1桁台半ばの伸びにとどまっています。
これに対抗するため、クアルコムはハイエンドのAndroidスマートフォン向けチップへシフトし、価格と利益率の向上を図っています。このセグメントでは、過去2四半期で年間12%の成長を達成しましたが、アナリストの予想では今後の成長率は年間5%増程度にとどまると見られています。
また、アップル(AAPL)が2025年秋から自社製の5Gチップを採用し始めるため、クアルコムは2026年末までに同社のビジネスの大部分を失う見込みです。アップルとの関係は長年対立しており、同社は独自チップの開発に長年取り組んできました。これにより、クアルコムの売上への影響は10%以上に及ぶ可能性があります。
中国市場におけるリスク
2025年度、クアルコムの売上の46%を中国市場が占めています。しかし、中国政府は自国産チップの開発を加速しており、米国製チップへの依存を減らす方針を示しています。ハイエンド市場では依然としてクアルコムの技術が優位性を保っていますが、ローエンドおよびミッドレンジのスマートフォン市場では競争が激化し、すでに一部のビジネスを失っています。
自動車チップ事業の成長
クアルコムの自動車チップ部門は急成長を続けており、過去3年間の年間成長率は平均45%に達しています。この分野では、デジタル・コックピットシステムや運転支援技術、自動運転向けチップの需要が高まっています。
この市場は競争が少ないものの、エヌビディア(NVDA)などの企業が台頭しており、今後競争が激しくなる可能性があります。アナリストの予想では、自動車チップ部門の売上は前年比49%増の8億9,000万ドルと見込まれており、近い将来には四半期売上10億ドルに到達すると期待されています。
IoT分野の成長とPC向けチップの影響
クアルコムのIoTセグメントには、仮想現実(VR)や拡張現実(AR)、スマート家電向けチップなどが含まれています。このセグメントは2023年から2024年にかけて低迷していましたが、新しいPCチップの登場によって回復の兆しを見せています。
前四半期の売上高は前年比22%増と急増し、アナリストはホリデーシーズンの影響もあり、売上は23%増の14億ドルと予想していました。これにより、IoT分野の成長は2025年第1四半期も続いています。
知的財産ライセンス部門の不安定さ
クアルコムの知的財産ライセンスおよびロイヤルティ収入は不安定になりがちです。前四半期は前年比21%増と好調でしたが、第1四半期の売上はアナリストの予想をやや下回る15億4,000万ドルとなりました。
また、アップルが独自チップの導入を進めることで、このセグメントの収益が減少する可能性も高まっています。
まとめ
クアルコムの2025年第1四半期決算は、スマートフォン向けチップの需要拡大や多角化戦略の成功により、予想を大きく上回る結果となりました。特に自動車チップ部門やIoT分野が高成長を遂げており、今後の成長が期待されています。
一方で、スマートフォン市場の成熟やアップルの独自チップ導入、中国市場における競争の激化など、リスク要因も抱えています。クアルコムは今後の成長のために、多角化戦略をさらに推し進めていく必要があります。