米国の自動車業界は、新たな関税の影響を受ける可能性が高まっています。2025年2月1日、ドナルド・トランプ大統領は、メキシコとカナダからの輸入品に対し、25%の関税を課す計画を発表しました。この政策は、自動車メーカーにとって大きなコスト増加を招く要因となるため、関連株のボラティリティが高まる可能性があります。
テスラへの影響は限定的か
テスラ(TSLA)は、米国市場向けの車両をすべて米国内で組み立てています。しかし、車の部品の一部はメキシコやカナダから輸入されています。例えば、米国で販売される「モデルY」の部品の約15%はメキシコ産です。また、カナダ産の部品も含まれていますが、その割合を正確に把握するのは難しい状況です。
アメリカ道路交通安全局のデータによると、米国で組み立てられる一般的な自動車の部品の約30~50%がカナダまたは米国外から輸入されています。そのため、関税が導入されれば、テスラにとってもコスト上昇の要因となる可能性があります。
自動車メーカー全体に与える影響
フリーダム・キャピタル・マーケッツのアナリストであるマイク・ウォード氏によると、毎年米国で販売される何百万台もの自動車がカナダやメキシコで組み立てられています。関税が課されることで、これらのメーカーのサプライチェーンが混乱するリスクが高まると考えられます。
関税が引き上げられれば、自動車メーカーのコスト負担が増加し、価格が上昇する可能性が高いと予想されます。消費者にとっては、新車価格の上昇が購買意欲を低下させる要因となるかもしれません。その結果、売上や利益率にも影響を及ぼしそうです。
トランプ大統領の関税政策の目的とは?
トランプ大統領は、「不法入国者や麻薬が米国市民に害を及ぼす脅威があるため、国際緊急経済権限法(IEEPA)を通じて関税を課す」と説明しています。また、関税の目的は「製造業を米国に戻すこと」にあると述べています。
しかし、実際に関税がどのような影響をもたらすのかは不透明です。自由貿易の恩恵として、自動車産業は過去数十年にわたり技術革新を続け、品質の向上を実現してきました。例えば、1992年に締結された北米自由貿易協定(NAFTA)以降、米国の自動車産業は競争力を強化し、性能の向上を図ってきました。
自動車価格の変化と貿易の影響
貿易の影響を考えるうえで、自動車の価格動向を見ると興味深い傾向が見られます。1992年当時、フォード「F-150」ピックアップトラックの価格は約10,000ドルでしたが、2025年現在のエントリーレベルモデルの価格は約37,000ドルとなっています。
これは年平均約4%の価格上昇に相当します。一方、同期間における米国の世帯収入の増加率は約3%です。結果的に、F-150の価格は相対的に少し高くなりましたが、性能も大幅に向上しました。1992年モデルは145馬力の4.9リッターエンジンを搭載し、燃費は1ガロンあたり約14マイルでした。しかし、2025年モデルでは2.7リッターターボエンジンで325馬力を発揮し、燃費は1ガロンあたり約20マイル、牽引能力は約14,000ポンドと、格段に進化しています。
株価の動向
関税の影響が懸念される中、自動車関連株の動きも注目されています。
- テスラ(TSLA)は、2025年の年初から株価が横ばいで推移。
- フォード(F)の株価は約2%上昇。
- ゼネラル・モーターズ(GM)の株価は約7%下落。
- S&P 500種指数は約3%上昇。
ゼネラル・モーターズの株価は、先週発表された2024年第4四半期の決算を受けて約9%下落しました。2025年の業績ガイダンスは市場予想を上回りましたが、関税がガイダンスに与える影響については具体的に示されませんでした。これが投資家の不安を招き、株価下落の要因となっています。
まとめ
新たな関税政策により、自動車メーカーのコストが上昇し、サプライチェーンに混乱が生じる可能性があります。特に、メキシコやカナダに依存するメーカーにとっては大きな影響が予想されます。
テスラは米国内で車両を生産しているため影響は比較的限定的ですが、部品の調達コストが上昇すれば価格転嫁を余儀なくされる可能性があります。フォードやゼネラル・モーターズなどのメーカーは、関税の影響を受けやすく、今後の株価の動向にも注意が必要です。
関税政策が実際に自動車業界にどのような影響を及ぼすのか、今後の展開を注視していく必要があります。
*過去記事はこちら テスラ TSLA