2025年2月3日、日本経済新聞はオープンAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)への独占インタビューを掲載しました。この記事では、アルトマン氏が生成AI専用の新しい端末の開発に乗り出すことを正式に表明し、さらにAIインフラ事業「スターゲート」計画や中国との競争についての見解を示しました。本記事では、日経新聞の記事をもとに、オープンAIが目指す未来について紹介します。
AI専用端末の開発 – iPhone以来の革新を狙う
アルトマン氏は、日本経済新聞の取材に対し、「AIはコンピューターとの接し方を根本から変えるため、新しい端末が必要だ」と述べました。これは、2007年にiPhoneが登場して以来のデジタル機器の革新となる可能性があります。
特に注目すべきは、AI端末の操作インターフェースについて、アルトマン氏が「音声がカギになる」と語った点です。従来のスマートフォンが指を使ったタッチ操作を主軸に進化してきたのに対し、AI時代には音声を活用した直感的な操作が求められると考えられます。
この端末開発には、アップル(AAPL)のiPhoneのデザインを手掛けたジョニー・アイブ氏が率いる企業と提携することが明らかになりました。アイブ氏は、スティーブ・ジョブズ氏の右腕として、iPhoneやMacBookのデザインを手がけた人物であり、今後数年のうちに試作品が公開される見通しです。
独自半導体の開発 – AIの最適化へ
オープンAIはすでに、自社で独自の半導体開発に取り組んでいることも明らかにしました。アルトマン氏は詳細には言及しなかったものの、AI処理を高速化し、消費電力を削減するために独自のチップを開発しているとのことです。
これは、米アップルやメタ・プラットフォームズ(META)がAI処理に特化した半導体を開発している流れに沿うものであり、オープンAIもハードウェアの最適化に乗り出したことを示しています。
スターゲート計画 – AIインフラの構築へ
オープンAIは1月21日、ソフトバンクグループ(SBG)や米オラクル(ORCL)と共同で、総額5000億ドルを投じ、米国にAIインフラを整備する計画「スターゲート」を発表しました。
このプロジェクトでは、データセンターの建設・運営をオープンAIが担い、AIの開発から運用までをカバーする巨大事業となる予定です。アルトマン氏は「スターゲートは、AIインフラを上流から下流まで広く手がけるプロジェクトになる」と語り、日本企業の参画にも期待を寄せています。
この背景には「中国への対抗」という要素もあり、米国がAI開発の主導権を握るための戦略として位置付けられています。
中国のAI開発と競争
オープンAIと競争する中国の新興企業DeepSeek(ディープシーク)についても言及がありました。ディープシークは「オープンAIに匹敵するAIを安価に開発した」と主張しており、アルトマン氏は「明らかに良いモデルだ。競争は真剣勝負になる」と評価しつつも、「オープンAIはすでにこのレベルのモデルを持っているし、今後もより良いモデルを作り続ける」と述べています。
さらに、アルトマン氏は「中国のAI開発は米国にかなり追いついている」とし、権威主義国家によるAIの悪用への懸念も示しました。
AIの安全性 – 国際的な監視機関の必要性
アルトマン氏はAIの安全性について、「AIの開発競争が人類にとって脅威とならないよう、国際的な監視機関が必要だ」と指摘しました。これは、原子力技術を監視する国際原子力機関(IAEA)のような組織の設立を構想していることを示唆しています。
まとめ – オープンAIの未来戦略
今回のインタビューで明らかになったポイントを整理すると、以下のようになります。
- AI専用端末の開発
- 音声インターフェースがカギとなる
- ジョニー・アイブ氏と提携し、試作品は数年内に公開
- 独自半導体の開発
- AI処理を最適化する自社設計チップ
- スターゲート計画
- 5000億ドルを投じ、AIインフラを整備
- 日本企業の参画も期待
- 中国との競争
- 中国のAI開発は急成長
- ディープシークのモデルも評価
- AIの安全性
- IAEAのような国際監視機関の設立を提案
オープンAIはソフトウェア開発だけでなく、ハードウェア・半導体・インフラにまで手を広げ、AI時代の覇権を握るための布石を打っています。アルトマン氏のリーダーシップのもと、今後どのような技術革新が生まれるのか、目が離せません。