中国AI企業ディープシークが米国にもたらすセキュリティリスク

  • 2025年2月1日
  • 2025年2月1日
  • BS余話

中国を拠点とする人工知能(AI)企業ディープシークは、最新のAIモデル「R1」の開発を進めており、急速にユーザーを増やしています。しかし、その技術の急成長に対して、米国のテクノロジー業界では不正競争の懸念が高まっています。特に、ディープシークが米国の企業オープンAIの未承認データを使用している可能性があることが指摘され、AI業界全体でセキュリティへの意識が強まっています。

米国政府とオープンAIの調査

オープンAIは、ディープシークがオープンAIの未承認データを用いてAIモデルを訓練している兆候があるかどうかを調査していると発表しました。さらに、米国商務省は、ディープシークがシンガポールの第三者を通じて、エヌビディア(NVDA)の高度なAI向け半導体を入手し、米国の輸出規制を回避した可能性について調査を進めています。

エヌビディアのAIチップは、中国市場におけるAI開発にとって極めて重要な要素です。2022年の輸出規制を受けて、エヌビディアは規制に適合する形でH800チップを設計しました。しかし、2023年に規制が更新され、このチップの輸出も禁止されました。ディープシークは、その規制前にチップを確保し、AIモデルを開発したと説明しています。

シンガポール経由の半導体供給問題

米国下院の中国共産党に関する特別委員会の委員長らは、シンガポールを通じた中国向けの半導体供給の規制を強化するよう求めています。彼らは、シンガポールがエヌビディアの売上の22%を占めている点を指摘し、規制を強化しない場合は、厳格なライセンス要件を課すべきだと主張しています。

エヌビディアは、「当社は、パートナー企業に対して適用されるすべての法律を順守するよう強く求めており、規則違反が確認された場合は適切に対応する」と述べ、輸出規則の順守を強調しています。また、シンガポールの売上が必ずしも違法な輸出を意味するものではなく、シンガポールを拠点とする企業が米国や欧米向けの製品を製造しているケースもあると説明しました。

議員らは、商務省が輸出規制をより頻繁に更新し、エヌビディアの新たなチップ「H20」を制限リストに追加すべきだと求めています。中国が規制の隙間を利用しないようにするために、今後も規制の強化が求められています。

ディープシークのR1モデルと米国のAI市場への影響

ディープシークのR1モデルは、米国および世界中で急速に普及しています。このモデルは、マイクロソフト(MSFT)やアマゾン・ドット・コム(AMZN)などのAIホスティングセンターのメニューにも追加され、企業のクラウド環境で利用可能になりました。しかし、米国の議員らは、この状況を問題視しています。

議員らは、「米国のユーザーのデータがディープシークによって取得され、そのデータがAIの性能向上に利用される一方で、中国のAIシステムが米国市場で大きなシェアを獲得することを許してはならない」と指摘しています。ディープシークは、ユーザーの情報を中国のサーバーに保存する可能性があることを明示しており、データの流出リスクが懸念されています。

ディープシークのセキュリティリスクと専門家の警鐘

サイバーセキュリティ企業パロアルトネットワークス(PANW)の研究グループ「Unit 42」は、ディープシークのAIが悪意のあるコードの生成や、攻撃的な情報の作成が可能かどうかをテストしました。その結果、研究者らはディープシークのAIがこのような用途に使用できることを確認しました。これにより、ディープシークの利用にはリスクが伴うことが明らかになりました。

さらに、Enkrypt AIの報告書では、ディープシークがオープンAIのo1モデルと比較して、4倍も安全性の低いコンピューターコードを生成する傾向があり、有害な出力を生成する確率が11倍高いと指摘されています。また、ディープシークの回答は、AnthropicのAIモデル「Claude-3-Opus」と比べて、連邦政府の公正および差別に関する規則に違反する可能性が3倍高いとの結果が出ました。

専門家らは、ディープシークの利用者に対し、定期的にAIモデルの出力をチェックし、問題がないか確認することを推奨しています。

まとめ

ディープシークのR1モデルは、急速に市場を拡大し、米国のAI業界に影響を与えています。しかし、その急成長の背景には、米国の輸出規制を回避する動きや、セキュリティリスクの懸念が存在しています。オープンAIや米国政府は、ディープシークの活動を精査し、必要に応じた規制を強化する方針を示しています。

今後、AI市場における競争はますます激化し、米国と中国の間で技術的な対立が続くことが予想されます。特に、エヌビディアのチップ供給問題や、データの管理方法に関する議論は、今後のAI政策に大きな影響を与える可能性があります。

AI技術の発展と安全性の確保のバランスをどのように取るかが、米国のAI業界にとっての重要な課題となりそうです。

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