米国が中国AI企業ディープシークを調査 〜エヌビディアのチップ規制回避の可能性〜

ブルームバーグが1月30日に報じたニュースによると、米国当局は中国のAI新興企業ディープシーク(DeepSeek)を調査していることが明らかになりました。この調査は、同社がエヌビディア(NVDA)の高度な半導体を東南アジアの第三者を通じて購入し、米国の輸出規制を回避した可能性があるためです。

このニュースは、米国の対中技術規制の有効性に対する疑問を改めて投げかけるものとなっています。ブルームバーグの報道内容を整理しながら、今回の問題の背景や影響について解説します。

米国の調査対象となったディープシークのAI技術

ディープシークは、最近「R1」と呼ばれる高性能なチャットボットを発表しました。このチャットボットは、一部の性能において米国の主要なAI企業と同等のレベルに達しており、中国のAI開発力がこれまでの予想以上に進んでいる可能性を示唆しています。

特に、ディープシークが強調しているのは、R1の低コストと高効率性です。これにより、競争力のあるAIモデルをより短期間で市場に投入できると考えられています。しかし、この技術の背後にあるリソースが「米国の技術を基にしているのではないか」という疑問が持ち上がっています。

米国の輸出規制とエヌビディアのチップ問題

ディープシークのAI技術の進展が注目される一方で、米国当局はエヌビディアの半導体がどのように同社のモデル開発に使用されたのかを調査しています。

エヌビディアは、AI開発に不可欠な最先端の半導体を提供する企業であり、中国市場向けにカスタマイズされた「H800チップ」を販売していました。しかし、2023年10月、バイデン政権はH800やその他のエヌビディア製チップの中国向け販売を禁止しました。その後、エヌビディアは中国向けに「H20」と呼ばれる性能を抑えたチップを設計しましたが、現在、米国政府はH20も規制対象に含めるかどうか検討中だと報じられています。

ディープシークの研究者によると、同社が発表した「V3モデル」はエヌビディアのH800チップを2,048個使用して訓練されたとされています。この点が、米国当局の調査対象となっています。

シンガポール経由の調達が焦点に

今回の調査では、ディープシークがシンガポールの第三者を通じてエヌビディアのチップを購入した可能性が指摘されています。

米国政府は、中国へのチップ供給を制限するために貿易規制を拡大してきました。2023年には、中国へ間接的に半導体を供給する可能性のある40カ国以上に対し規制を強化しましたが、当時、シンガポールは対象に含まれていませんでした。しかし、2025年現在では、シンガポールへの半導体の大量出荷には厳格なライセンス要件が適用されるようになっています。

ブルームバーグの報道によると、エヌビディアの売上の約20%はシンガポール関連とされていますが、同社はこれが必ずしも中国向けであるとは限らないと説明しています。エヌビディアの広報担当者は、「当社の公開書類では顧客の『請求先』を報告しており、『出荷先』ではありません。多くの顧客がシンガポールに事業体を持ち、米国や欧米向けの製品にそれらの事業体を利用しています」と述べています。

しかし、米下院の中国問題専門委員会の議員たちは、シンガポールが適切な規制を行わない場合、より厳しいライセンス要件を適用すべきだと主張しています。

今回の調査が示すものとは?

今回のブルームバーグの報道は、米国が進める対中技術規制の課題を浮き彫りにするものとなっています。

  • 米国は中国の先端技術開発を抑制するために厳しい規制を導入していますが、今回の事例のように第三国を経由した調達が行われるケースが増えています。
  • ディープシークのAI技術が急速に進化していることは、中国の技術力向上を示唆しており、今後の技術戦争の行方に大きな影響を与える可能性があります。
  • 米国政府は今後さらに規制を強化する可能性が高く、エヌビディアのH20チップの販売規制や、シンガポールを含む中継地の監視強化が進むと考えられます。

まとめ

ブルームバーグの報道によると、米国は中国のディープシークがエヌビディアのチップをシンガポールの第三者を通じて入手した可能性があるとして調査を進めています。ディープシークのAI技術の急成長は、中国の技術力向上を示唆する一方で、米国の規制の有効性に疑問を投げかけています。

この問題は、今後の米中間の技術競争、特にAI分野での覇権争いに大きな影響を及ぼす可能性があり、今後の展開が注目されます。

*過去記事「エヌビディアのH20チップ、中国市場での販売に新たな制限?投資リスクを分析

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