中国の人工知能(AI)新興企業であるディープシーク(DeepSeek)が、世界のテクノロジー株に衝撃を与えています。同社が開発した最新AIモデルは、高価なチップを必要としない一方で、費用対効果が非常に高いとされ、エヌビディア(NVDA)のような企業に対する市場評価の妥当性に疑問が投げかけられました。このニュースにより、世界の株式市場、とりわけAI関連株に大きな影響が及んでいます。
ディープシークの影響で下落する世界の株式市場
ナスダック100先物は最大3.2%下落し、ニューヨーク時間午前3時23分時点でS&P 500先物は1.9%下落しました。欧州市場では、半導体製造装置メーカーであるASMLホールディング(ASML)の株価が8%以上下落し、ハイテク株が市場全体の下落を主導しました。同時に、Cboeボラティリティ指数(VIX)先物は急上昇し、投資家の不安が顕在化しています。
ユニオン・バンカール・プリヴェのマネージング・ディレクターであるベイ・サーン・リング氏は、「ディープシークがコストを抑えながら強力なAIモデルを開発できることを示したことで、AIサプライチェーンへの大規模な投資案件が見直される可能性がある」とコメントしています。
中国AI企業の可能性と市場の反応
ディープシークは、クオンツファンドの最高責任者であるリアン・ウェンフォン氏によって設立され、製品の透明性や費用対効果の高さが注目されています。同社の最新アプリは、アップル(AAPL)のApp Storeランキングでトップに立ち、ユーザーからはその使いやすさと透明性が評価されています。この製品は、ユーザーからの問い合わせに対して作業内容や推論過程を表示するという特長を持っています。
また、中国本土上場企業のメリット・インタラクティブ(Merit Interactive)はディープシークとの関連性が明確であり、株価がストップ高となりました。一方、香港市場ではハンセン・テクノロジー指数が2%上昇するなど、ポジティブな影響も見られます。
AI投資の見直しを迫るディープシークの技術
シンガポールを拠点とするAletheia Capitalの責任者であるニルグナン・ティルチェルバム氏は、「ディープシークの製品は、AI技術に多額のリソースを投入することが最適な方法であるという前提に対して重要な疑問を投げかけている」と述べています。エヌビディアの株価も、ドイツのTradegateで6%以上下落し、投資家がAI関連技術の費用対効果を再評価していることを示しています。
さらに、ナスダック100指数は現在、予想ベースの売上で27倍の取引水準にあり、過去3年間の平均である24倍を上回っています。一方、エヌビディアは33倍で取引されており、これも3年間の平均を若干下回る状況です。
中国AI技術の台頭がもたらす未来
ディープシークの登場により、アメリカのAI技術が数年のリードを保っているという従来の見方に疑問が生じています。ディープシークのモデルは、アクセス可能なオープンソース技術を活用しており、最先端のチップに依存していません。この点が、エヌビディアなどの既存リーダー企業に対する競争圧力を増大させています。
サクソ・マーケッツのチーフ投資ストラテジストであるチャール・チャナナ氏は、「ディープシークの登場は、競争が激化している状況を反映している。現時点では直接的な脅威とは言えないかもしれないが、将来的には既存の企業を迅速に追い詰める新たな競合が出現する可能性が高まっている」と指摘しています。
AI関連企業の収益が注目される重要な週
今週は、アップルやマイクロソフト(MSFT)をはじめとする大手テクノロジー企業の売上発表が相次ぐ予定です。これにより、AI主導で高騰していた同セクターの評価が再度問われる場面が予想されます。ディープシークの台頭が、グローバルなテクノロジー市場の勢力図にどのような影響を与えるのか、今後の動向に注目が集まります。