近年、アルファベット(GOOGL)の株価は堅調に推移していますが、その中にはまだ市場で正当に評価されていない隠れたビジネスが存在すると指摘されています。それが、同社のAIチップ「TPU(Tensor Processing Unit)」と、AI研究を主軸とする「DeepMind」です。これら2つの事業は、単独でも数千億ドル規模の価値を持つ可能性があるとアナリストは見ています。
TPU: エヌビディアに匹敵する可能性を秘めたAIチップ
アルファベットが独自に設計するAIチップ「TPU」は、AIデータセンターで活躍しています。このチップは、エヌビディア(NVDA)のGPUと組み合わせてAIコンピュータの性能を向上させる役割を果たします。現在、マイクロソフト(MFST)やアマゾン・ドット・コム(AMZN)、アルファベットといった主要なクラウド事業者がそれぞれ独自のAIチップを保有しており、アルファベットのTPUはその中でも特に注目されています。
TPUは「ニューラルネットワークのワークロードに特化したマトリックスプロセッサー」だとアルファベットは説明していますが、Futurum Researchはよりわかりやすく、AIデータセンターには従来のCPUチップ、エヌビディアが独占するGPUチップ、そして基本的にAIコンピューターの性能を向上させるTPUがあると説明しています。
DeepMind: OpenAIに匹敵するAI研究機関
アルファベットのAI研究機関であるDeepMindも、同社にとって重要な存在といえます。この組織は、アルファベット全体のAI技術を牽引しており、グーグル検索やクラウド事業の性能向上にも大きく貢献しています。DeepMindの技術力はOpenAIと肩を並べるほど高く、AI分野における中核的な存在と認識されています。
隠された価値:7000億ドルを超える可能性
D.A. Davidsonのアナリスト、ギル・ルリア氏によると、アルファベットのTPUとDeepMindが単独で事業化された場合、約7000億ドル(1株あたり60ドル)もの価値があると試算されています。アルファベット全体の時価総額が約2.5兆ドルであることを考慮すると、これは非常に重要な数字です。
ルリア氏は、アルファベット全体を複数の事業に分解して評価する「SOTP(Sum of the Parts)」分析を活用し、この価値を算出しています。現在の株価にはこれらの価値が十分に織り込まれていないため、投資家にとっての大きなチャンスになる可能性があります。
SOTP分析の重要性と課題
SOTP分析は、企業が事業を分割または売却する可能性がある場合や、収益構造を詳細に理解する際に有用な手法とされています。最近では、米国政府がグーグル検索を独占と認定したことで、アルファベットの分割や事業売却の可能性について議論が再燃しています。この背景から、SOTP分析に注目が集まっています。
一方で、SOTP分析には限界もあります。特に、アルファベットのように事業間が密接に関連しているケースや、分割の可能性が低い場合には、従来の評価手法ほど効果的でない場合があります。
今後の投資判断
現在、アルファベットの株価は約200ドルで取引されていますが、ルリア氏は「ホールド」の評価を維持しています。これは、同社が事業分割や分社化の可能性を示唆していないためです。ただし、長期的にはTPUやDeepMindの潜在価値が株価に反映される可能性が高く、引き続き注目が必要といえます。
まとめ
アルファベットのTPUとDeepMindは、AI業界でエヌビディアやOpenAIに匹敵するポテンシャルを持つ重要な事業です。これらの事業が市場で適切に評価されれば、アルファベットの株価にはさらなる上昇余地が期待されます。投資家にとっては、市場動向を注視しながら、長期的な視点での投資判断を行うことが重要です。
*過去記事 アルファベット GOOGL