米国ラスベガスで開催されているCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)において、主催する業界団体である全米家電協会(CTA)は、次期トランプ政権による関税提案がもたらす影響についての調査結果を公表しました。調査では、関税が家電製品の価格上昇を招き、米国の世界的なリーダーシップを脅かす可能性が指摘されています。
この報告書は、トランプ氏が過去の選挙キャンペーン中に語った政策案に基づいており、中国製品やその他の国々からの輸入品に対して高額な関税が課されるシナリオを分析しています。
「10%/70%」シナリオの概要と影響
CTAの調査によると、トランプ氏が2023年8月にFox Business Networkで語った内容や、昨年のFox Newsでのインタビューを基にした「10%/70%」シナリオでは、中国製品に70%、その他の国々からの輸入品に10%の追加関税が課されるとされています。この場合、米国での家電製品価格は大幅に上昇すると予測されています。
「20%/120%」シナリオと更なる影響
さらに高い関税率を設定した「20%/120%」シナリオもCTAの報告書で検討されています。このシナリオでは、中国製品に120%、その他の国々からの輸入品に20%の関税が課されます。これにより、米国の家電価格がさらに高騰する可能性が高まります。
各製品への具体的な影響
ノートパソコンとタブレット端末
ノートパソコンとタブレット端末が特に大きな影響を受けるとCTAは指摘しています。平均的なノートパソコンの価格は357ドルから540ドルの値上げが予想され、これらの製品の米国内生産量の少なさが問題を深刻化させています。
スマートフォン
米国で販売されるスマートフォンの約80%が中国から輸入されています。関税が適用されると、調達先を他国に移す必要が生じますが、他国製品も関税の影響を受けるため、スマートフォンの平均価格は213ドルから305ドル上昇すると見込まれています。
ゲーム機
ゲーム機の85%が中国で製造されている現状を考慮すると、大量生産を担う供給元を切り替えるのは困難です。ゲーム機の価格は平均で246ドルから356ドルの上昇が予想されます。
テレビ
テレビについては、中国以外の供給元が比較的多いため、価格上昇の影響は他の製品より小さくなります。平均的なテレビの価格上昇幅は48ドルから82ドルにとどまる見通しです。
米国経済と家電業界への広範な影響
CTAの報告書では、関税による影響は単なる価格上昇にとどまらず、米国の国際的な評判や信用にも悪影響を及ぼすと警告しています。また、多くの国が米国の輸出品に対して貿易制限措置で報復する可能性があり、米国が経済的に孤立するリスクも指摘されています。
業界と保守派の見解
CTAは自由貿易を支持する立場から、家電業界の利益を代弁しています。例えば、アップル(AAPL)やサムスン電子、マイクロソフト(MSFT)などの企業が加盟しており、関税政策の影響を懸念しています。
一方で、保守派シンクタンク「アメリカン・コンパス」のチーフエコノミスト、オレン・キャス氏は「家電業界が長年、中国の労働力を利用することで利益を得てきた現状を再考すべき」と述べ、関税政策を支持する姿勢を見せています。
今後の展望
トランプ政権の移行チームは関税政策の正当性を主張し、「米国の製造業者や労働者を守るために、さらなる関税政策を推進する方針」を示しています。一方で、関税が家電業界や米国経済全体に与える影響を慎重に見極める必要があります。
関税政策の行方によって、米国の技術革新や市場競争力に大きな変化がもたらされる可能性があり、今後の動向が注目されています。