米国株式市場の2025年は、「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる大型グロース株以外の銘柄にもパフォーマンスの広がりが見られるかどうかが注目されています。一方、配当については、市場全体で健全な中程度の一桁成長が期待されています。
配当成長の背景:業績成長との関係
ゴールドマン・サックスの米国ポートフォリオ戦略チームのシニアストラテジストであるベン・スナイダー氏は、「歴史的に見て、配当の主な推進力は業績成長です」と述べています。2024年の業績成長が堅調であったため、2025年はさらに良好な結果が期待されています。
ゴールドマン・サックスの予測によると、2025年のS&P 500(SPX)の1株当たり利益(EPS)は前年比11%の増加が見込まれています。これにより、2024年の配当成長率6%を上回る7%の成長が期待されています。
一方、バンク・オブ・アメリカ証券(BofA)の米国株式ストラテジスト、オスン・クォン氏はさらに積極的な予測をしており、2025年の配当成長率を12%と見込んでいます。クォン氏は、S&P 500のEPS成長が過去1年間で加速している点を指摘しており、配当の増加はこの業績成長に遅れて反映されることが多いと説明しています。
配当総額と市場の追い風
S&P ダウ・ジョーンズ・インデックスのシニアインデックスアナリスト、ハワード・シルバーブラット氏は、2025年の配当総額が約6850億ドルに達し、新記録を更新すると予測しています。これは、2024年の6300億ドルを上回る見通しです。現在の記録的な業績や、低下する金利、強い雇用市場、安定した経済成長がこの見通しを支えています。
クォン氏は、過去10年間のトータルリターンに占める配当の割合が16%と低調だったことを指摘しつつ、2025年以降は配当がより重要な役割を果たすと予測しています。
セクターごとの配当成長見通し
2025年には、S&P 500の11セクターの多くで配当成長が見込まれています。以下は主なセクター別ETFの成長率予測です。
- 資本財セクター(XLI):41.3%
- 不動産セクター(XLRE):24.3%
- 金融セクター(XLF):19.7%
- 公益セクター(XLU):12.3%
- 生活必需品セクター(XLP):10.8%
- 素材セクター(XLB):9.9%
- ヘルスケアセクター(XLV):8.6%
- 一般消費財セクター(XLY):8.4%
一方で、情報技術セクター(XLK)はわずか1.6%、エネルギーセクター(XLE)はマイナス2.7%の成長が予想されています。
株主への還元を強化する企業
配当がS&P 500のトータルリターンの大きな割合を占めていた1936年から2012年までの40%に対し、過去10年間では16%にとどまりました。しかし、低い配当性向(現在29%、歴史的平均は50%)やリタイアしたベビーブーマー世代の増加が、企業の配当支払いを後押ししています。
技術セクターの配当利回りは低い傾向にありますが、その絶対額では大きな影響を持っています。たとえば、アップル(AAPL)は利回り0.4%ながら、昨年9月末までの12か月間で152億ドルの配当を支払いました。情報技術セクター全体では、S&P 500の配当総額の約15%を占めています。
また、昨年配当を開始した大手テクノロジー企業には、メタ・プラットフォームズ(META)やセールスフォース(CRM)が含まれます。エヌビディア(NVDA)も昨年、わずかではありますが配当を増加させました。
配当成長の恩恵を受ける銘柄
金融セクターでは、以下の企業が注目されています。
- JPモルガン・チェース(JPM):利回り2.1%、1年間のトータルリターン約45%。昨年秋に四半期配当を9%増加。
- ブラックロック(BLK):利回り2%、1年間のトータルリターン約30%。現在、四半期配当は5.10ドル。
- USバンコープ(USB):利回り4.1%、1年間のトータルリターン約17%。昨年、四半期配当を50セントに引き上げ。
これらの企業に加え、不動産やヘルスケアセクターも高い成長率を示しており、多様なセクターで配当増加が期待されています。
配当戦略の重要性
2025年の米国株式市場では、配当の役割がますます重要になると予測されています。業績成長、低金利環境、安定した経済成長が配当増加を後押ししており、投資家にとって配当はトータルリターンを最大化する重要な要素となりそうです。