コーヒーチェーン大手といえばスターバックス(SBUX)の名前が真っ先に思い浮かぶかもしれません。しかし近年、その牙城を脅かしつつある存在として注目を集めているのが、オレゴン州発のドライブスルー式コーヒーチェーン、ダッチ・ブロス(BROS)です。
当ブログでは2024年4月7日に「コーヒー業界の隠れた宝石:ダッチ・ブロスの成功物語と未来予測」で初めて同社に関する記事を掲載。同社が16州で計831店舗を展開しており、今後も年間160店舗以上のペースで新規出店を重ね、2030年までに4,000店舗を目指すという野心的な計画を紹介しました。
さらに、2025年1月4日付で米国の投資情報メディア「モトリーフール(The Motley Fool)」がダッチ・ブロスの最新動向を取り上げ、過去1年で80%を超える株価上昇を記録した同社への投資について「引き続き注目すべき4つの理由」を挙げました。短期的には株価が調整する可能性はあるものの、長期的には依然として成長余地が大きいと強調しています。
本記事では、ダッチ・ブロスがいかにして急成長を遂げ、今後どのようなビジョンを持って展開していくのかを整理するとともに、投資家の視点から見た注目ポイントを解説します。
成長を続ける既存店売上と新規出店の相乗効果
既存店売上の回復
ダッチ・ブロスは2024年のインフレ局面で価格改定を行いながらも、既存店売上高は2024年第4四半期に前年比5%成長を記録。短期的な低迷期を乗り越え、総売上高も前年比26%増と、成長軌道をしっかりと示しました。価格上昇があるにもかかわらず既存客が離れにくいという点は、ブランドや顧客体験への高い支持を裏付けるものといえるでしょう。
新規出店ペースの加速
さらに2024年に159店舗を新規オープンし、合計831店舗という数字に到達。2025年には165店舗の新規出店を計画しており、長期目標として2030年までに4,000店舗展開を視野に入れています。この拡張路線は、売上増の大部分を担う「店舗数増加」と「既存店売上の安定成長」という二本柱によって支えられています。
利益改善への道と経営体制の刷新
黒字化に向けた進捗
2023年はまだ赤字を計上していたダッチ・ブロスですが、第4四半期には赤字幅を380万ドルにまで縮小し、着実に黒字化への地固めを進めています。創業者兼CEOが食品業界のベテランを経営の中核に招き入れることで、事業拡大フェーズに対応した経営戦略へとシフトしている点も見逃せません。
経営の焦点:顧客体験と従業員満足
同社の最大の差別化要素ともいえるのが、ドライブスルー式店舗ならではの手軽さと「カジュアルな接客」。地域社会への寄付や店舗単位での慈善活動など、従業員・顧客を含めたコミュニティ志向の姿勢が、多くの支持を集めています。大型店であるスターバックスとは異なる「ちょうどいい規模感」が、急拡大してもアットホームな接客体験を維持できる秘訣と思われます。
投資家にとって注目すべき「4つの理由」
モトリーフールの最新記事では、過去1年で81%の株価上昇を見せたダッチ・ブロスへの投資に際し、特に注目すべき4つのポイントが挙げられています。
理由1:依然として強い成長力
2024年9月期までの3か月間で売上は前年比28%増を達成。既存店売上高も前年同期比2.7%増と堅調です。この規模の企業において四半期ごとの増減は当然あり得ますが、少なくとも上場以降、成長は継続しており、アナリストたちも2026年までは類似ペースの売上増を見込んでいます。
理由2:拡大余地の大きさ
ダッチ・ブロスは900店舗を超える水準に達しているものの、2030年までに4,000店舗を目指すという計画が示すように、まだ拡大の初期段階ともいえます。既存の市場(西海岸や南西部)だけでなく、東部への進出も視野に入れ、さらなる市場獲得が期待できます。
理由3:利益の伸び
新規出店による売上増加が続く中、同社はすでに利益を上げつつあり、そのペースも上昇傾向にあります。2023年の1株当たり利益は0.30ドルでしたが、2024年には0.45ドル、2025年には0.55ドルに増加すると予想されています。固定費が大きく変わらない中で店舗数と売上が増えれば、利益率の改善が進むのは自然な流れです。
理由4:顧客が求める“カジュアルで本物志向”の体験
スターバックスをはじめとする大手チェーンが提供するフォーマルで洗練された接客に飽き始めている層がいるのも事実です。ダッチ・ブロスの「カジュアルで個人的な接客」「ドライブスルー中心の利便性」は、現代の消費者が求める新しいスタイルに合致しています。ブランドへの信頼度や親近感が高まれば価格競争力が増し、継続的な成長に寄与すると考えられます。
変動はつきもの、しかし長期視点で魅力は健在
ダッチ・ブロスの株価は、過去にも大きな変動を経験しており、短期的な調整局面が生じる可能性は否定できません。しかし、同社の「既存店売上+新規店舗拡大+ユニークな接客スタイル」という強力な成長ストーリーは、長期的に見れば非常に魅力的です。株価が上下動する局面でも、大局を見据えた投資家にとっては買い増しの好機となり得ます。
まとめ:ダッチ・ブロスは投資価値のある“新星”か?
- 急拡大中の店舗網:2030年までに4,000店舗という目標に向けて邁進
- 既存店売上の安定成長:インフレ環境下でも前年比プラスを維持
- 経営体制の強化:食品業界のベテラン招聘で黒字化加速
- 顧客の新たなニーズに合致:カジュアル接客とコミュニティ志向で差別化
スターバックスが巨大なブランド力を誇る一方で、「地域密着」「ドライブスルー」「従業員との距離感」を強みに急拡大しているダッチ・ブロス。短期的な株価変動はあっても、この成長ストーリーが頓挫する兆候は今のところ見当たりません。長期的に成長する可能性を秘めたコーヒーチェーンへの投資を検討するなら、ダッチ・ブロスはその候補のひとつに挙げられます。
今後、ダッチ・ブロスがどのような進化を遂げるのか。新たなエリアへの進出や、店舗数のさらなる増加によるスケールメリットなど、注目すべき材料は多く存在します。株価にばかり目を奪われず、同社が繰り広げる長期成長ストーリーをウォッチすることが、投資家としての勝機を広げる第一歩となるかもしれません。