一般的に知られる「60/40ポートフォリオ」やターゲットデートファンド(TDF)は過去のものになるかもしれません。新たな研究では、全てを株式に投資する戦略が、退職後の収入を最大化し、資金不足を防ぎ、大切な人々に多くの遺産を残す方法として注目されています。
米エモリー大学ゴイズエタ・ビジネススクールのアシスタント教授、アイジャン・アナルクローバ氏とその共著者たちの研究によれば、「国内株式に1/3、国際株式に2/3」の割合で投資するポートフォリオが最適な選択肢として推奨されています。
株式のみのポートフォリオの魅力
従来の投資戦略は、株式と債券を組み合わせた分散投資を推奨し、年齢に応じて株式の比率を減らすことが一般的でした。しかし、アナクルーバ氏らの研究は、このアプローチが退職後の資産管理において最適ではないことを示しています。
同氏と共著者の研究によると、退職後の生活資金を株式100%で管理することが、以下の点で有利です。
- 資産の増加
株式100%のポートフォリオは、TDFやバランスファンドと比較して、退職後の資産を平均39~50%多く増加させる結果が得られました。 - 資金枯渇リスクの軽減
4%ルールを適用した場合、株式100%戦略では、資金が尽きるリスクがわずか7.0%であったのに対し、TDFでは19.7%、バランスファンドでは16.9%に上ることが分かりました。 - 分散効果の向上
国内株式と国際株式の組み合わせ(国内株式33%、国際株式67%)は、長期的な分散効果を最大化し、資産の成長を支援します。
国際株式の優位性
アナクルーバ氏は、債券よりも国際株式が優れた分散投資の手段であると述べています。債券は短期的にはリスクを軽減する役割を果たすものの、長期的にはインフレとの相関関係が高く、その価値が損なわれる傾向があります。一方で、国際株式は国内インフレに対する自然なヘッジ手段となり、長期的にポートフォリオ全体の安定性を向上させる可能性があります。
株式100%のポートフォリオに伴うリスクと対策
株式100%戦略は、長期的な視点では高いリターンを生み出しますが、短期的には大幅なドローダウン(資産価値の下落)を経験する可能性があります。研究によると、最適ポートフォリオの平均最大下落率は55%に達しました。
これを克服するには、投資家が市場の変動に耐える忍耐力を持つことが重要です。また、基本的な生活費を確保するために、年金などの安定収入源を組み合わせることで、リスク許容度を向上させる方法も検討する必要があります。
長期投資の重要性
アナクルーバ氏は、「統計分析に基づいて最適な戦略を提供しているが、最終的な決定は投資家自身に委ねられる」と述べています。株式100%戦略を採用する場合、長期的な視点で投資を継続し、短期的な市場の変動に動揺しないことが成功の鍵となります。
まとめ
アナルクローバ氏の研究は、全株式ポートフォリオが長期的な資産形成において優れた選択肢となり得ることを示唆しています。ただし、この戦略を成功させるには、市場の変動に耐える強いメンタルと計画性が求められます。株式市場のリターンは確実なものではないため、自分自身のリスク許容度を理解し、慎重に判断することが重要です。