AI革命が引き起こす電力需要の爆発、成長が期待される公益株企業とは?

  • 2024年12月27日
  • 2024年12月27日
  • BS余話

公益株は2023年の困難を乗り越え、2024年は好調な年となりました。今年に入り、公益事業株式は20%も上昇し、注目を集めています。ただし、業界全体としては分裂が進んでおり、成長を牽引する企業と停滞する企業の差が鮮明になっています。

特に、人工知能(AI)によるデータセンター需要を背景に、特定の公益企業が大きな利益を得る可能性が高まっています。有望とされるのは、エンタジー(ETR)、ナイソース(NI)、アイダコープ(IDA)、PPL(PPL)、ピナクル・ウェスト(PNW)、エクセル・エナジー(XEL)などです。

公益株の安定性と変化

公益株はこれまで、安定した四半期配当と景気後退への防御力を求める投資家にとって魅力的な選択肢とされてきました。たとえ消費者が経済的に困難な状況にあっても、電気代は優先的に支払われる傾向があるからです。

一方で、2024年においては、公益株を購入する理由がこれまでと変わりつつあります。それは、AIブームに対応した公益事業者が市場で大きな注目を集めているためです。

AIブームがもたらす新たな成長機会

米国各地では巨大なAIデータセンターの建設が進められており、それに伴い電力需要が急増しています。この需要を満たしているのが公益事業者であり、一部の企業はその恩恵を顕著に受けています。特に、独立系発電事業者と呼ばれる企業群、例えばコンステレーションエナジー(CEG)、ビストラ(VST)、タレンエナジー(TLN)などは、株価が2倍から3倍に跳ね上がるほどの成長を遂げました。

これらの企業は天然ガスや原子力発電所を所有し、自由市場で電力を販売することで高収益を上げています。さらに、大手テクノロジー企業と直接契約を結ぶことができるため、規制料金体系に縛られることなく成長しています。

一部の公益事業者が模索するAI需要対応

規制対象の公益事業者は、公益事業委員会による監督下で運営され、消費者の電気料金を抑えつつ信頼性の高いサービスを提供することを使命としています。そのため、売上の増加には制限があります。しかし、一部の公益事業者は大手テクノロジー企業と特別契約を締結することで、AIブームから利益を得る方法を模索しています。

例えば、エンタジーは、メタ・プラットフォームズ(META)との契約を締結し、ルイジアナ州で建設される巨大なデータセンターに電力を供給するため、3基の天然ガス発電所を新設する計画を発表しました。この契約では、メタがプロジェクトの初期費用を負担し、プロジェクト中止時のリスクも引き受ける仕組みとなっています。

エンタジーの戦略と他企業の追随

エンタジーは、この契約により既存顧客に負担をかけることなく売上基盤を拡大できます。この戦略により、2024年度の売上成長率を6%から8%、2026年以降は8%から9%に引き上げる見込みです。

他の企業と比較すると、エンタジーは環境規制の制約を受けにくい事業環境にあることが特徴です。例えば、ニューヨーク州やマサチューセッツ州では環境目標が厳しく、新規天然ガス発電所の建設が困難です。このため、エバーソース(ES)やコンソリデーテッド・エジソン(ED)といった企業は2024年に苦戦を強いられています。

一方で、アイダコープはアイダホ州の水力発電の強みを活かし、クリーンエネルギー需要に対応しています。また、ナイソースやピナクル・ウェスト、エクセル・エナジーもAI関連需要の恩恵を受ける可能性があります。

投資家にとっての公益株の魅力

公益株は長年、安全性を重視する投資家にとって魅力的な選択肢でした。現在もその特性は維持されていますが、2024年においては成長の可能性が加わり、新たな魅力を提供しています。

JPモルガンやモルガン・スタンレーは、データセンター関連契約を通じて成長する公益事業者を高く評価しています。JPモルガンは公益事業を「ディフェンシブ債券の代替としてリスクとリターンのバランスが取れた投資先」と捉えており、モルガン・スタンレーは「過小評価されている成長余地」を指摘しています。

まとめ

公益株は、AIブームによる成長機会を得て、リスク保護と成長の双方を兼ね備えた投資先として注目されています。特にエンタジーやアイダコープ、ナイソースなどの企業は、データセンター需要の恩恵を受け、大きな成長を遂げる可能性があります。2024年の市場環境下で、公益株がどのように成長を遂げるかは投資家にとって注視すべきポイントです。

*過去記事「AI時代を切り拓く!メタの巨大データセンター計画が動かす産業界

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