エヌビディア(NVDA)の株価は、過去最高値から10%以上下落しています。市場において同社の株価を取り巻く問題がいくつか存在している中で、モルガン・スタンレーのアナリストであるジョセフ・ムーア氏は、同社の将来に対して注目すべきポイントを示しました。特に「ブラックウェル」と呼ばれる新しいチップが2025年後半には大きな焦点になると予想しています。以下では、同氏の分析に基づき、エヌビディアの株価に影響を与える懸念事項とその展望について解説します。
エヌビディアの株価に影響する4つの懸念
ムーア氏は、エヌビディアに関する4つの懸念事項を挙げています。特に注目すべきは、同社の旧型チップファミリー「ホッパー」に関する問題です。
- ホッパー(Hopper)チップの影響 ホッパーシリーズの一部であるH200の製造が、ブラックウェルの製造リソースを奪うことが懸念されています。具体的には、HBM3e(高帯域幅メモリ)の供給に影響を与える可能性があるため、ホッパー製造が遅れるリスクが指摘されています。ただしムーア氏は、この問題が大きな影響を与えるわけではなく、2025年初頭には解消されるとしています。
- ブラックウェル(Blackwell)の準備状況 ブラックウェル製品のすべてのバージョンが同時に出荷可能な状態ではないことも、不安を生む要因となっています。一部の製品タイプが準備不足であることが顧客間の割り当てを引き起こす可能性がありますが、ムーア氏はブラックウェルの全製品が最終的には完売するとの見解を示しています。
- 人工知能アクセラレーター市場におけるASICの競争 ブロードコム(AVGO)やアマゾン・ドット・コム(AMZN)が人工知能アクセラレーター市場でシェアを拡大する可能性について、投資家の間で懸念が広がっています。しかし、ムーア氏は、2025年にはGPUへの需要が再び高まると予測しています。
- スケーリングに関する懸念 大規模な人工知能クラスターの拡張が市場に与える影響やROI(投資収益率)に疑問が投げかけられています。しかし、ムーア氏はエヌビディアが効率的なクラスター拡張技術を展開しているため、これらの懸念が緩和されると期待しています。
ブラックウェルへの期待とエヌビディアの今後
新チップのブラックウェルは、2025年後半以降にエヌビディアの業績を支える重要な製品として注目されています。ムーア氏は、「ブラックウェルによって市場のハードルが大幅に引き上げられる」と述べており、同製品が顧客から高い需要を得ると見込んでいます。また、同氏はホッパー製品の遅れやブラックウェルの準備状況に関する懸念が、2025年後半には解消される可能性が高いとしています。
エヌビディアの売上成長率と競争環境
ムーア氏は、2025年のエヌビディアの売上成長率がブロードコムやアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)を上回ると予測しています。また、2025年にはASIC市場の一部で再びGPUが選好される状況になると考えられます。これにより、エヌビディアは引き続き成長を維持できると期待されています。
長期的視点からの投資判断
ムーア氏の見解によると、短期的な市場の懸念や不安定なデータは過度に強調されている場合が多く、長期的には重要性を失う可能性が高いとされています。特に、ブラックウェルの導入や大規模クラスタ技術の進展は、エヌビディアが市場で優位性を維持するための鍵となりそうです。
エヌビディアの株価は、現在一部の懸念事項によって下落していますが、ブラックウェルを中心とした新技術の展開により、長期的な成長が期待されています。投資家にとっては、短期的なノイズに惑わされず、同社の長期的なビジョンを注視することが重要です。
*過去記事はこちら エヌビディアNVDA