米国の半導体企業、マイクロン・テクノロジー(MU)は、最新の業績見通しで市場コンセンサスを大幅に下回る結果を発表しました。この発表により、株価は急落しましたが、ウォール街ではその反応についてさまざまな意見が交わされています。
TDカウエンのアナリストであるクリシュ・サンカー氏は、株価の大幅な下落に対し、短期的なメモリー価格の弱さは十分に織り込まれていたと指摘しつつ、人工知能(AI)分野の成長に期待を寄せています。
株価16%を超える急落、過去最悪に近い下げ幅
12月19日の米国市場で、マイクロンの株価は14時過ぎの段階で16.36%安の86.9ドルで取引されています。この急落は、2020年3月16日に記録した19.8%の下落以来、最悪の1日あたりの下落率となる可能性があります。この状況により、投資家は「数四半期にわたるメモリー価格の調整局面」に突入するのではないかとの懸念を抱いています。
一方で、サンカー氏は、この懸念は過度に悲観的な見方だとしています。同氏は、高帯域幅メモリ(HBM)事業の恩恵を受けているマイクロンが、来年の下半期には在庫状況が正常化するとの見通しを示しました。
AI需要が今後の成長を後押し
サンカー氏は、AIアプリケーションを搭載した家電製品が依然として初期の成長段階にあるとし、マイクロンの長期的な成長に対する楽観的な見方を維持しています。同時に、同氏は目標株価を135ドルから125ドルに引き下げましたが、投資判断は「買い」を維持しています。
バンク・オブ・アメリカの見解:慎重な姿勢
一方、バンク・オブ・アメリカのアナリスト、ヴィヴェク・アーヤ氏は、マイクロンの粗利益率がパソコンやスマートフォン市場の低迷により圧迫されている点を指摘し、目標株価を125ドルから110ドルに引き下げました。同氏は投資判断も「買い」から「中立」に変更し、短期的には株価が好転する可能性は低いとの見解を示しています。
強気の見方を維持するアナリストたち
マイクロンに対しては依然として多くのアナリストが強気の姿勢を崩していません。ファクトセットが追跡している43人のアナリストのうち37人が引き続き「買い」を推奨しています。
その中には、パイパー・サンドラーのハーシュ・クマール氏も含まれます。同氏は、データセンター投資の増加が市場拡大を後押しする可能性に言及し、目標株価を150ドルから120ドルに引き下げながらも、強気の評価を維持しました。
長期的な成長機会に期待
キャンター・フィッツジェラルドのC.J.ミューズ氏は、短期的な業績見通しは市場の期待を下回るものだったと認めながらも、マイクロンのダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ(DRAM)事業にとって今回の株価下落は「一時的な停滞」に過ぎないと述べています。
ミューズ氏は、目標株価を150ドルから130ドルに引き下げつつも、マイクロンの長期的な成長に対する信頼を示しています。
AI市場の拡大が鍵に
今回の業績発表は短期的な市場の動揺を引き起こしましたが、マイクロンは引き続きAI市場の成長を追い風に事業を拡大していく見通しです。高帯域幅メモリの需要増加や在庫の正常化が進めば、将来的に株価の回復が期待されると考えられます。
投資家にとって、マイクロンは短期的な課題を克服し、AI分野での強みを活かした成長を実現する企業として注目すべき銘柄です。