天然ガス価格は、2024年を通じて低迷する予測が立てられています。しかし、2025年には価格上昇への期待が高まっており、その背景には輸出の拡大と人工知能(AI)関連の需要増加が挙げられます。
電力需要増加が天然ガスに与える影響
バンク・オブ・アメリカのグローバル商品およびデリバティブ調査責任者であるフランシスコ・ブランチ氏は、「電力需要が好調であることから、天然ガス市場にも明るい兆しが見える」と述べています。特にAIデータセンターなどの新しい産業需要が、電力消費を押し上げると見込まれています。
AIデータセンターの電力需要は2030年までに年間10%から15%増加し、同時期には世界の総電力需要の5%を占める可能性があると予想されています。このような施設は24時間365日稼働する必要があり、電力供給の安定化が重要視される中、天然ガスが主要な供給源となっています。
天然ガスの未来:石炭からの移行と発電インフラの拡大
GEベルノバ(GEV)は最近、ガスタービン需要の見通しを上方修正しました。CEOのスコット・ストラジック氏は、「米国では電力の40~45%がガス発電によるものだが、世界的にも石炭からガスへの移行が進むことで、ガス発電の比率はさらに高まる」と述べています。
このような動きは、特に米国での発電インフラの拡大を促進するとみられます。BOKファイナンシャルの上級副社長デニス・キッスラー氏も、「天然ガスを利用することで発電所が効率的に稼働し、持続可能なエネルギー供給が可能になる」と指摘しています。
規制緩和と輸出拡大が追い風に
エネルギー分野における規制緩和も、天然ガス市場にプラスの影響を与えると予想されています。特に、液化天然ガス(LNG)の輸出許可やパイプラインプロジェクトに関する規制の撤廃は、売上の増加を後押しするとみられています。Rストリート研究所のシニアフェローであるフィリップ・ロセッティ氏は、「規制緩和によって追加コストが削減されることで、天然ガス事業の利益率が向上する」と述べています。
ウィリアムズ・カンパニーズ(WMB)やオネオク(OKE)といった企業は、年初来で40%以上の株価上昇を記録しています。これらの企業の成功は、天然ガスの輸送および処理分野での需要拡大を反映しています。
ヨーロッパ市場の変化と輸出需要
米国のLNG輸出は、欧州諸国がロシア産ガスへの依存を低減させるために貯蔵能力を強化していることから、来年15%増加すると予測されています。S&Pグローバル・コモディティ・インサイトは、2025年にヘンリーハブの価格が1MMBtuあたり平均4ドルを超えると見込んでいます。
一方で、輸出に関する政策変更やLNG供給プロジェクトの遅延が価格上昇を抑制する可能性も指摘されています。ゴールドマン・サックスのアナリストは、2025年第4四半期に天然ガス価格が4ドルに達するとの予測を修正しました。
まとめ
天然ガス価格は2024年を通じて厳しい状況が続く可能性がありますが、輸出拡大や新たな電力需要の増加により、2025年以降の市場回復が期待されています。特にAIや石炭からの移行といった長期的な要因が、天然ガス市場の成長を支える重要な原動力となりそうです。
天然ガスは、持続可能なエネルギー供給の要として注目されており、今後の市場動向を注視することが重要です。